＃ルキ←ジャン
女々しいジャン注意
「俺より先に死ぬな」と繰り返す男に自分は「死なない」「置いていかねーよ」と俺も繰り返し囁くが、実際そうなってしまった時に俺はどうするんだろうなと一人になった時に良く考える。自分を庇って凶弾に倒れたルキーノをもし目の前で見てしまったら、ドクドクと止まらない血を、視界を赤く染めていくその光景を見ながら自分は何を思うのだろうか。多分俺は自分でボスという自身の立場を一瞬忘れるに違いない。自分を庇って倒れた男をその場でじっと見つめて、呆然としたままきっと何もする事が出来ないに違いない。ルキーノの前では強がっちゃいるが、本音を言えば、そうなるくらいなら一緒に死んじまいたいと思っちまうくらいだ。だが、そんなあまりに女々しい自身の思考回路は、思わず笑っちまうくらいに馬鹿バカしい。そんな女みたいな思考なんて、自分で考えといて嫌悪するくらいだ。だから頭の片隅でＣＲ：5の二代目ボスのジャンカルロがそれを拒絶する。お前はボスだ、ＣＲ：5の二代目ボスージャンカルロ。ルキーノは自分への忠義を果たして倒れたのだ。自分を守る為に庇ったのだ。こうなることは想定済だったはずだろ。ならお前はお前の役割を果たせ。と、そうした様々な声が自身の中できっと木霊している事だろう。そして同時に復讐心にも囚われてはいけないとも、頭の中で冷静な自分が言い聞かせるのだ。俺はボスで、でも俺はあいつの相棒で、仲間で、家族で、恋人で、けれど俺はボスなのだからそういう振る舞いをしなきゃいけない訳で、あぁーいったい此処で優先するべきなのは何なのかなんてそれこそ、訳がわからなくなっちまう。きっと理屈じゃない。その状況になってみなきゃ解らないが、そんな状況になどいっそならなきゃいいんだ。なって欲しくない。おそらく自分が自分じゃいられなくなるのは目に見えてるのだ。考えられない、考えたくもない。けど俺はこうして何度も何度もしたくもないシュミレートを頭の中でしちまうんだ。なんで考えさせる、考えさせるなよ。アンタが「俺より先に死ぬな」とかなんとか言うから、馬鹿な俺はルキーノの思いを拒否したくなんてなくて、いつでも優しく受け止めてやりたくて、心配などさせたくなくて、重荷に感じさせたくなくて、そんな自分に成りたいがために、こんな嫌な想いをしてでも、アンタの死んだ時の状況を想像してるんじゃないか、強くなろうとしてるんじゃないか。アンタが死んでも、ボスとして冷静に対処できる自分を作り上げたいと思っちまうんだろうが。こんな自分の思考が気持ち悪いとすら思う。それでも自分を抱きしめてくる男に。愛おしげに自分を呼ぶアンタに。自分を気にかけてくれる男に。俺は何もかもどうでもよくなっちまう。なぁ、知ってるかルキーノ。俺は、こんな事考えちまうくらい、アンタが好きで好きでたまらないって事を、さ。
溺れる
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