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short 10




#ジャンルキジャン
誰のルートにも入って無い、パラレル。

















 ボスであるジャンカルロは、どうにも気になって仕方がないことが有った。目の前の男を見ていると、自分が落ち着かない時がある。胸が早鐘して、妙に照れくさい、そして二人っきりでいる時は、ジャンは自分の顔がにやけてしまう事を自覚していた。そんな自分を目の前の男に、眉を寄せて訝しがられた事もある。だって仕方がないだろう。この男は本当に良い男なのだから。


「ルキーノー。」
「どうした?」
「もしかしたら俺、アンタに恋してるかも。」
「・・・ハァ?」












ビギニング












 シマを回っている最中、隣に並んで歩いていたジャンの突然の言葉にルキーノは驚きでその足を止め、ジャンの方へとその顔を向けた。当の本人はあっけらかんと普段通りに、動揺すらその顔に浮びあがらせる事も無く、ルキーノへと再び口を開く。

「だから、恋だよ!恋!もしかしたら、俺ルキーノに惚れてるかもしれないってことよ。」
「医者でも呼ぶか?」
「いらないっつの。てかそもそも正気だって。」
「いつもの、冗断・・」
「いや、冗断でも無いっての。」
「なら・・遊びか?」
「でも無いし。まぁ、ルキーノが遊びでも俺と付き合ってくれるなら喜んで。」

けどそこらへんのお姉さんと一緒にするなよ、俺の純情を何だと思ってる訳?と、ジャンは眉をしかめて、グダグダとルキーノの反応に対する異を唱え始めた。
だがそうは言ってもルキーノにはジャンの言葉が本気に言ってるようにはあまり思えなかったし、そもそもその発言は男同士という概念そのものをぶっ飛ばしている。

「どうにも、お前の言葉は信じられんな。」
「えー俺そんなに軽く見えるのけ?」
「日常の行動を振り返ればな。」
「ひでーな、おい。」
「そもそも飛躍し過ぎだ。どうして、どうやってそんな事になる。」
「いやだって、ルキーノの事かっこいいなー好きだなーって思ったから。」
「いや、それは嬉しいんだが、安易すぎやしないか?俺は男だぞ?」
「何か問題でもあるのかよ?」

いや大有りだろう普通に考えてと、ルキーノは心の中で思わず目の前の男に突っ込みを入れた。ジャンのこういうぶっ飛んだ・・・いや、枠に嵌らないその行動と思考は好むべき点であるし、そういった性格がこれまでのCR:5を支えてきたと言って良いだろうが、今回ばかりは其れに異論を唱えたい。むしろ唱えさせてくれ。ルキーノは冷静な自分を取り戻そうと、フゥーと大きな息を付くと、ジャンと真っ正面から向き直った。

「お前、欲求不満でもあるのか?」
「ん?まぁ、そうだな。最近忙しかったし・・」
「じゃあ、それだ。今日は早めに切り上げてやるから、女一人でもとっ捕まえて発散してこい。」
「何だよそれ・・・」

ジャンが、スッとその琥珀色の眼を細め、不機嫌そうな声をルキーノへと向けた。今までの軽い感じの様子から、打って変ったその様子に、ルキーノは思わず眼を見張る。マジなのかと、漸くジャンの想いがけっしてふざけて言っている訳では無いのだという事に気づき、ルキーノは珍しくうろたえてしまう。女性からならば、何度もこういった好意を寄せられる事はあったし、それなりに上手い付き合い方も心得ている。しかし、自分と同じ男。しかも我らがCR:5のボスである立場の人間からこうした事を言われるとは予想外であり、考えた事も無かった為、流石のルキーノもどう対処して良いのかが検討もつかなかった。女と同じように嬉しいと言ってやるべきか、それとも後に響かないように此処できっぱり断っておくべきなのか。

「ジャン」
「・・何だよ。」
「悪かった。」

だけれどそんな事を考える前に、ルキーノはまずその言葉を口にしていた。ジャンの気持ちを本気と受け取らずに、流そうとしてしまった事は謝らなければならない。気持ち云々の前に、それだけはジャンに言っておきたかった。

「悪気があった訳じゃない。だが、やっぱり何処かで信じられない気持ちもあってな。」
「いや、良いよ。俺も、ちょっと急すぎたし。」

そう言って苦笑を浮かべたジャンに、少しほっとした気持ちを抱きつつルキーノは言葉を続ける。

「正直どう答えたら良いか、まだ俺にも解らん。だがな勘違いはするなよ、お前の気持ちは嫌な訳じゃない。」
「・・ほんと、アンタって優しいよな。」

ルキーノの言葉に、一瞬驚いたようにジャンは眼を丸くしたが、しかしそれも穏やかなものへと変わる。

「それだけで充分だぜ。俺はこの気持ちだけ伝えときたかっただけだし。アンタを困らせるつもりも無かったしな。」

気にするなよとジャンはそう言って、さーて残りの仕事をさっさと片付けるとしますかねと腕を上げその背中を伸ばすと、止めていた足を前へと進める。ルキーノはそんなジャンの姿を見て少しだけ複雑な思いを抱きながら、その後を追うようにその足を再び動かした。

「あ、そうだルキーノ」
「ん、どうし・・」

目の前で立ち止まったジャンにルキーノはぐいっと急にネクタイを引っ張られ、前のめりにさせられて、ジャンに軽くそれを重ねられる。直ぐに離れていったそれに、一瞬意識を奪われた。

「俺、諦めた訳じゃねーから、覚悟しとけよ。」
「・・このやろっ」

自身の直ぐ近くで挑発的に笑うジャンの姿に、唇を奪われた怒りよりもむしろ笑いが込み上げてくる。ほんとお前は、計算外な事を突然してくれるよな。ルキーノはくくっと少しだけ笑いをその口元から漏らしてから、ポンッとジャンの頭を軽く叩いた。

「あぁ、覚悟しとくぜボス。それに直ぐに俺がお前に堕ちてもつまらんだろ?」
「えーそこは、俺に惚れたとか言っとくとこじゃね?」
「俺はそんなに軽い男じゃないんでな。」
「ちぇ・・言ってろ、カーヴォロ。」

そんな馬鹿なやり取りをお互いに交わしながら、ルキーノとジャンは今日の予定をさっさと終わらせる為に再び並んでその足を前へと進めた。悪くない、そんな風に思ってしまったのは、既にこのラッキードッグが自分にとってそう悪くない位置にいたからなのかもしれない。















END
(段々とジャンに溺れていけば良いと思います。)





あきゅろす。
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