#ルキジャン(元拍手)
「ジャン。まだ起きてるか?」
「ん?何だよ」
けだるそうにベッドに突っ伏しているジャンの横で、肘を付きながら横向きにねっ転がっていたルキーノがその名を呼んだ。行為を終えたばかりのジャンの身体はところどころで痛みを訴えており、出来るならば明日の為にこのまま寝かせて欲しい所だ。だがルキーノの声が普段と少し違うように感じ、ジャンは溜息と共にその重い腰を起した。ルキーノに向き合うようにその身を反転させる。
「まさか、まだ足りないとか言うんじゃねーだろうな?アンタ。」
「お望みならば、してやらん事も無いが?」
「アホこけ。あっちこっち痛くて、もう限界だっつの。」
用が無いなら寝るぜー俺と口にすると、どうしてだか黙ってしまったルキーノに訝しげに首を傾けた。
「おい、ルキーノ。」
「あのな・・ジャン。」
「何?」
「お前・・・何で俺の事好きになってくれたんだ?」
「・・・はぁ?」
何言ってんだこいつはと、あまりにもな質問にジャンは文句を口にしようとした。けれど案外真剣にルキーノが自身を見つめてくるものだから、その気も失せてしまう。案外アレッサンドロ親父の見立ては当たってるものだなと、心の中でふとオズの魔法使いに例えられた時の事を思い出した。ルキーノはライオン。勇気が欲しい臆病なライオン。まさしくその通りだ。常はコーサ・ノストラの男として強く自分を見せていても、時に彼は自身にその弱さを見せることがある。まったく、いつもはあんなに自分に自信を持っている男が何を言ってるんだか。
「こういう事までしてんのに、今更何言ってんだよ。」
「それは・・そうだが。」
「好きになる事に何か理由が必要なのか?じゃあ、一目惚れにも理由があるという持論でもあんのか、あんた?」
「そういう訳じゃない。ただ、俺は・・」
「あぁーもう、ガタガタうるせーな、じゃあ、これで満足か?」
ジャンは寝そべっているルキーノに覆いかぶさりその唇に自身のそれを合わせた。ルキーノの瞳が大きく見開かれる。その反応に気分を良くしながら、口づけを深くした。たく、俺はアンタより口が小さいんだから、息上がるのも早いんだっつの。
「ん・・ふ・・っつ、ジャン?」
「ふっ、あ・・はぁ。んで、ん・・これ以上・・何がお望み?何なら、もっとサービスしてやるぜ?」
「・・・・そう・・だな。悪かった。」
「ん、解ればよろしい。」
ジャンは満足そうに、口元を上げると再び寝に入る為にその身をベットへと沈める。ルキーノも同じように寝の体制に入るのを確認し、ジャンはポツリとそれを告げた。
「俺だって解んねーよ。なんでアンタに惹かれたのか。」
「ジャン。」
「けどな・・・俺は、アンタのそういう弱いとこも、情けないとこも、とてつもなくかっこいいとこも、全部ひっくるめて好きになったんだ。あと、奥さんや娘さんを本当に今でも心から愛しているアンタもな。」
それで良いだろう?とジャンが笑うと、あぁ、とルキーノはその顔を一瞬だけ歪めていつものように笑った。
「それに、今更ほっとけねーて。アンタ、俺がいなかったら直ぐに死にそうだしな?」
「あぁ、かもしれん。」
「だろ?」
くすりと二人は笑うと、ジャンとルキーノは自然と寄り添い、抱きしめ合いながら、お互いそっとその眼を閉じた。不安になったら俺が何百回でも何千回でもキスして抱きしめて、思う存分慰めてやる。だってあんたはそうしてやらないと、直ぐに弱気になる臆病なライオンなんだからな。
臆病なライオン
END
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