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短編
6
戸羽が情けない声を上げて恥も外聞もなく地面に頭を擦りつけていると、メランはいい加減鬱陶しくなったのか、戸羽の腹を蹴り上げた。
 
声にならない声を上げ、戸羽は息もできずにゲェゲェと嘔吐した。

さっき腹を殴られた時に胃の中のものはあらかた吐いてしまったので、もう胃液くらいしか出てこなかったが、戸羽は地面に伏したまま何度も何度も口の中に広がる酸っぱいものを吐き出した。

「黙ってそこで見てろよ。俺がボルテックス孕ませるとこ、特別に特等席で見せてやるからさ」
「や、やめて……うぐぅ」
 
もはや戸羽はその場から動けず、逃げ出すこともできない。
 
この状態で戸羽にできることなど何もないと判断したメランは、それ以上関心を示すこともなく捨て置くと、触手に拘束されている水崎の方へ近づいていった。
 
触手に弄ばれ続けた水崎の体は熱を持て余していた。ワイシャツのボタンやジーンズのジッパーはすべて外され、そこから覗く肌は触手が絡みつき、熟したような色香を漂わせていた。
 
メランがすぐそこまで来ると、それまで唇を噛み締めていた水崎の潤んだ瞳に敵愾心が浮かんだ。パンパンに膨らんだ股間を弄ばれ、はしたない喘ぎ声を上げ続けてもおかしくないはずなのに、うわずった声を押えつけメランへ呼びかける。

「それ以上、と、戸羽さんを傷つけないでくれ……! んぅ、俺が相手になるから、あぅっ」
「この期に及んでまだ他人の心配なんて偉いねー。俺の子供産んでくれたら考えてあげるよ」
「分かった……」
「さすが、ボルテックスは聞き分けがいいね。じゃあお前、ボルテックスの服脱がせて挿入しやすいようにしろ」
 
ネアモネの触手によって肌蹴たシャツがさらに脱がされ、細身ながら筋肉のついた裸体があらわになっていく。ジーンズやシミのできた下着も下へとずり降ろされた。勃起した陰茎がプルンと上下に揺れ、細い触手を何本も飲み込んだ後孔が晒される。
 
体は完全に快楽にのまれているのに、それを拒否して必死になっている水崎の表情はそそるものがあった。
 
人間を見下しているメランでさえ、一瞬だが軽口を叩くのも忘れ水崎の顔を覗き込んでいた。

「お前は俺に孕まされるために生まれてきたんだよ。他の誰でもない、この俺のためにね」
「違う、俺はそんなことのために……あぁっ! いやっ、穴がっ! ぎっ、広がっていく……!」
 
水崎の姿に興奮したのか、挿入されていた触手がますます激しく動いて水崎の穴を外側へと引っ張り、無理矢理広げようとしていた。ずっと無言のまま水崎を愛撫していたネアモネも、心なしか息が荒くなっている。
 
しかしそんなことをメランが許すはずもなかった。

「何勝手なことしてんだ! ほぐすのはもういいから体だけ支えてろ!」
「そ、そんなに怒らなくてもいいだろ。大体、繁殖用の人間は共有することになって――」
「ごちゃごちゃうるさい。それ以上文句つける気なら、まずお前を殺してやろうか」
「ちゃんとやるよ! やるから怒らないでくれ」
 
ネアモネは水崎の穴から触手を引き抜き、陰茎や胸に絡ませていた触手も引っ込めると、大人しく腕や足、胴体だけを持って水崎の体を支えた。
 
ずっと触手を挿入されていた後孔は、引き抜かれてもなおぽっかり口を開けている。そして何かを求めるように、ヒクヒクと動いていた。
 
それまで不機嫌そうにしていたメランも、水崎の卑猥な姿を見ると、すぐに機嫌を直して向かい合った。

「待ち遠しかっただろ? これからお前の腹の中、俺の子種でいっぱいにしてあげるよ」
「うっ、くっ……! た、頼みがある。俺がお前を満足させたら、他の人間には手を出さないでくれ」
「あーはいはい、分かった分かった」
 
水崎の必死の頼みにも生返事で返し、メランはいよいよ挿入の準備に取り掛かろうとする。ところが、不意にその動きが止まった。
 
メランの異変に誰かが気づく間もなく、黒くしなやかな巨体は音もなく飛び上がり、水崎やネアモネを超えて跳躍した。
 
次の瞬間、メランの立っていた場所に鋭い刃物のようなものが突き刺さっていた。
 
まるでカラスの羽のような形のそれは、十本ほどが深々と地面に刺さっている。

「な、なんだ!? まさか敵?」
 
状況を飲み込めないネアモネはあたりをキョロキョロと見回している。だがメランには攻撃してきた張本人の居場所が分かっていた。
 
射貫くような視線が真上を向くと、夜の闇に紛れて急降下してくる何かが視界に映った。
 
空気抵抗を減らすために折りたたまれた翼。巨大な猛禽類のような手足。
 
それはさながら弾丸のように、一直線にネアモネへと強襲をかけた。

「チッ、いいところでお前が来るなんてな」
 
一人状況を理解していたメランは、襲撃者が襲い掛かるよりも早くネアモネの触手をつかみ、襲撃者の狙うポイントに拘束されていた水崎を据えた。
 
何をするのかとネアモネは困惑していたが、襲撃者は水崎を認識した途端、一直線に向けていた狙いを反らせ水崎をかわす。そして地面ギリギリで方向転換し水平に滑空した。

「な、何!? えっ、ちょっ――」

襲撃者の向かう先にいたのは戸羽だった。それまで何をすることもできず地面に座り込んでいた自分の元に、正体不明の何かが向かってきていると気づいた時には体に衝撃が走っていた。
 
鋭い爪のついた腕が、体をがっしりとつかんでいる。戸羽は恐る恐る目を開き、自分が襲撃者に捕まり地面スレスレを飛んでいると気づくと息を飲んだ。
 
襲われているのか助けられているのかも分からないが、今落とされれば確実に大怪我は免れないので、黒い羽に覆われた体に必死でしがみつく。

だが命の危機を感じていても、異形の体は血が通ったようにぬくもりを持っていて、戸羽は不思議と襲撃者自体に恐ろしさを感じることはなかった。
 
メランたちとある程度距離を取ったところで、襲撃者は飛ぶのをやめ立ち止まった。

「おい、降りろ。しがみつかれたままだと邪魔だ」
「助けてくれたのか? お前はあのシャドウとかいう怪人の仲間じゃないのかよ?」
「もーうるさい! そんな質問して何になるんだ。今はそれよりあいつらをどうにかするのが先決だろ」
 
襲撃者は煩わしそうに戸羽を突き放した。容貌こそ大きな翼やくちばしのあるカラスの化け物のようだが、中身は少なくともメランたちよりは話の通じる相手のようで、戸羽は安堵のため息をついた。

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