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短編
6
いくら経っても巳堂は帰ってこなかった。体感ではもう一、二時間は経っている気がするけど、正確なところは分からない。
 
我慢できず勃起したチンポをペットシーツの敷かれた床に押し当て、腰を振って擦りつけることで射精する。一時的に悶々とした状態から解放されることはできたが、時が経てばアナルに挿入されたバイブが再び僕を欲情させた。
 
ただでさえ情けない格好で射精しなければならないことに屈辱を覚えているというのに、こう何度もそれを強制されているといい加減嫌気がさしてくる。おまけに一回目はすぐイけたのに、回数を重ねるたびイク間隔は長くなっていく。間隔が長いほど苦しみも増していく。
 
しかし、それがまたしばらく続くと僕の体に変化が起こった。
 
疲れ切って床でオナニーすることすらやめ、横たわっていた僕はふと気がついた。バイブで刺激される感覚が、最初のムズムズとしたものと違い、ハッキリと感じることのできる快感に変わっていることに。

「あっ……な、何、これ? んっ、あぁっ!? ひっ、何か来てっ、んあぁっ!」
 
振動を与えられている箇所から甘い痺れが広がり、体の芯が熱くなっていく。
 
ビクビクと引きつる腰や脚は僕の言うことを聞かず、チンポはガチガチに硬くなって精液ではない液体をダラダラと涎みたいに垂れ流していた。
 
自分の体の変化に戸惑っていると、容赦なくその瞬間は訪れた。

「あああっ! うそっ、これ何!? なっ、いやああっ! んあっ、ダメっ、こんなっ、嫌だぁっ! んおっ、おっ、おふっ!」
 
頭の中が真っ白になる。体は勝手に痙攣して、どこがどう動いているのかも分からない。
 
失神したかと錯覚してしまうような凄まじい快感。それはほんの数秒の間に膨れ上がり、そして波が引いていくようにサッとどこかへ消えてしまった。
 
だが、バイブはいまだ動き続け、軽くイキ続けた状態をキープしている。

「ハッハッ、おぉ、もっ、イキたくないっ! 無理っ、死んじゃうっ、やっあああ、イキたくないのにぃ!」
 
無意味な叫びだというのは分かっていても、苦し紛れに口から出てしまう。そうでもしなければ気が狂ってしまいそうだ。
 
今度はさっきよりも簡単にイった。しばらく間を置き、またイった。それからまた、何度も何度も……。イクたびに間隔は短くなり、いつしかそれもなくなってずっとイキっぱなしになった。
 
僕は芋虫のようにのたうちまわり、声の限り叫び、喘いだ。脳が焼き切れそうな強すぎる快感のせいで正常な判断もできず、子供のように泣き叫びながら失禁して、本当に頭がおかしくなったのかもしれない。
 
このまま死ぬのだろうか。こんなところで精液や小便にまみれて死ぬなんて、いくらなんでもあんまりだ。せめて、万代さんに迷惑をかけてしまったことを一言謝りたかったのに。
 
万代さんのいつもと変わらない仏頂面が脳裏に浮かび、プツンと電源が切れたように目の前が真っ暗になった。


 

ガシャンガシャンと耳障りなする。僕はまどろみから抜けきれぬまま目を開け、焦点の定まらないぼやけた視界を見回した。
 
鉄格子の向こうに誰かいる。万代さんかな、そんな淡い期待は即座に打ち崩される。

「京太、ご主人様が帰ったよ。ほら、起きて挨拶しないと駄目だろう?」
 
ニヤニヤ笑う好色な表情に僕の体を弄るいやらしい視線。巳堂はここを出て行った時よりもずっと上機嫌になって戻ってきたようだった。
 
僕はヨロヨロと体を起こし、「おかえりなさい」と言って頭を下げた。せっかく機嫌を直したようなのに、下手なことをして再び機嫌を損ねたら今度は何をされるか分かったものではない。

「いい子にしてたみたいだね。手を出してごらん」
 
手錠のかかった両手を差し出すと巳堂はそれを外し、さらに檻の鍵も開けて僕を外へと出した。やっとあの閉塞感から解放されたものの、ずっと同じような体勢で寝ていたために手足は痺れ、疲労感の溜まる体は鉛のように重くて立ち上がることすら困難だった。

「すっかり汚れたね。そんなに気持ちよかったのかな?」
 
乾いた精液で汚れている僕の下半身を見て、巳堂はクスッと笑いながらしゃがみ込んだ。僕を四つん這いにさせ、入れっぱなしのバイブへ手をかける。

「途中で電池が切れたみたいだね」
 
パンツとも呼べないような下着を脱がせ、巳堂はバイブをゆっくりと引き抜いていく。

「おぉっ、んっ! 早くっ、抜いてください……!」
「京太のアナルはバイブ放したくないみたいだけどなあ」
 
ズルズルとバイブが引き抜かれていく感覚がたまらなく心地いい。動物みたいな声を上げながら感じ入り、ようやく完全に抜けてしまうと僕は肩で息をしながら湿っぽい吐息を漏らした。

「半日も入れっぱなしだとなかなか閉じないみたいだね。フフ、京太のアナル、必死に閉じようとして口をパクパクさせてるよ。本当に可愛いね」
「……み、見ないでください。こんなの、恥ずかしいです」
「何言ってるんだ? 俺は京太の情けない姿が一番可愛いと思ってるんだよ。万代にも見せたことのないところ、もっと見せてくれると嬉しいな」
 
万代さんも見たことのないような僕の姿なんて、もう十分見ただろうに。
 
巳堂はニコニコしながら僕を抱き上げ、簡易式のシャワールームへと運んでいく。
 
食事の前に体を洗え、と言われ僕は人一人が立って入れるほどの広さしかないシャワールームで、壁にもたれながらなんとか立ち上がり、汚れ切った体をぬるいお湯で洗い流していった。
 
綺麗さっぱり汚れを落とした体をタオルで拭い、巳堂にドライヤーで髪を乾かしてもらうと、ようやく食事にありつけた。
 
犬の餌皿に盛られたご飯と味噌汁とトンカツの切れ端。全部一緒くたに皿の中へぶち込まれていて、ほとんど残飯みたいな見た目だ。巳堂は夕食の残りだと言っている。
 
こんなものでも空腹には抗えず、僕は犬のように皿へ直接口をつけ貪り食った。

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