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短編
11
「でも想市と僕だけで今後も戦っていくなんて無理だ! また今日みたいなことにでもなったら、その時はもうどうしようもないんだぞ」
「今日は状況がイレギュラーだっただけだ。同じことが起こらないよう対策はする」
「そんなこと言ったって何ができるんだ!」
 
水崎は努めて冷静でいようとしていたが、マキの方は感情が先走ってわめきたてている。
 
言葉こそ乱暴だが、心配したり不安そうにしている様子はまさに年相応の子供のようで、戸羽は胸が鉛のように重くなり息が苦しくなる感覚を覚えた。
 
本当にこのまま、何事もなかったように日常生活へ戻って良いのだろうか。自分より年下の二人が命がけで戦っているのに、それを見て見ぬふりすべきなのだろうか。
 
戸羽は心の中で自問自答を繰り返す。何度も何度も同じ問いをして、戸羽はいよいよ決意を固めた。

「あのさ、水崎は俺がストリームになって戦うこと自体は反対してないよな?」
「……それがどういうことなのか分かってるのか?」
「正直実感はあんまり湧いてないけどさ、でもあんな話聞かされて無視はできないだろ?」
「危険を承知の上で言ってるのか? 大怪我や最悪死ぬ可能性だってあるんだ」
「覚悟できてなかったらそもそもメランと戦ったりなんてしてないよ。それに、俺だってシャドウに狙われる立場なんだぜ。だったらのほほんと生活するより、ストリームっていう対抗手段を持ったまま、お互いに協力し合って戦った方が色々なリスクも減っていいんじゃないか?」
「それはそうかもしれないが……」
 
水崎は難しい顔をしたままだったが、戸羽のもっともらしい言葉に明確な反論をすることもできなかった。

「それにな、俺より年下の二人が危険なことしてるのに見て見ぬふりなんてできないだろ? こういう時こそ年長者が体張らないとな! 二人ともこれからは俺のこと頼りにしてくれよ」
「あんたとはたった三歳しか歳違わないけどな。でも、気持ちは嬉しい」
 
険しかった水崎の表情が氷解し、まっすぐに結ばれていた口元が微笑みを浮かべた。心の底から笑っている水崎を見るのは、戸羽にとって初めてかもしれない。
 
笑っていると綺麗な顔がさらに引き立って、いつもそうしていればいいのに、と余計な言葉がつい口をつきそうになった。

「マキ君も何かあったら俺を頼ってくれ。シャドウとはいえまだ子供なんだし、危ないことは今後俺に任せろ、な?」
「はあ? 僕はお前よりずーっと年上だぞ。まあ、協力してくれるのは感謝する。だけど戦ってる時までそうやって調子に乗るなよ」
 
厳しい言葉に戸羽は苦笑いを浮かべるしかなかった。
 
しかし戸羽の協力を得られたことでマキも安心したのか、ホッとため息をつき、「最初から素直に協力するよう頼めばよかったんだ」と小言を言いながら水崎を小突いていた。
 
不安は大きいが水崎やマキとならなんとかやっていけるかもしれない。戸羽はふたりへ温かな眼差しを向けながら、右腕に輝く深紅の腕輪をそっと撫でた。

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