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短編
3
首に巻きつく触手へ徐々に力が込められていく。かろうじて呼吸はできるが、戸羽は恐怖のせいでろくに息もできなかった。
 
触手は全身に絡みつき体をギリギリと締めつけている。あの怪人のさじ加減ひとつで生死が決まると思うと、恐ろしさのあまり気が狂ってしまいそうだった。

戸羽は身じろぎすらもできずうつ伏せのまま拘束されていたが、不意に体を持ち上げられ、怪人と向かい合うように体の向きを反転させられた。
 
街灯の光に照らされ、怪人らしきそれの姿が細部まで見える。紫色の触手が人の形を模しているような、おぞましい化け物が戸羽のすぐ目の前にいる。顔も触手が寄り集まってできているので、どこで物を見ているのか判然としないが、こちらをじっくり観察していることは肌で感じることができた。

「ひっ! あ、あぁ……!」
「言葉も出ないくらい怖いか?」
 
意外にも触手の怪人が発したのは、パニックに陥ってる戸羽でも聞き取れる流暢な日本語だった。意思疎通ができると分かると、戸羽も少しは冷静になることができた。

「ど、どうして言葉が通じるんだ? 一体何なんだ?」
「お前らみたいな下等な種族の言葉なんかすぐに理解できるんだよ。それよりお前、ずいぶんいい匂いがするな」
「うわぁっ! な、何をするんだ!?」
 
わけの分からないことを言い出したかと思えば、怪人は戸羽のシャツの首元から細めの触手を入れ、直に体へ触れてきた。
 
やけにぬくもりのある触手は、粘液に覆われているのかベトベトしていて気持ち悪い。それが舐め回すように肌を這いずり、胸のあたりを撫でてくるものだから、戸羽はたまらずうめき声を上げて顔をひきつらせた。

「あぁ、こいつは間違いないな。繁殖用の人間に会えるなんて運がいい」
「はん、しょく?」
「お前には俺たちシャドウの繁栄のための礎になってもらうんだよ。分かりやすく言えば、俺や他の奴らの遺伝子を孕む肉袋になるんだ」
「お、俺にお前らの子供産めって言うのか!? そんな馬鹿な、俺は男だぞ! 頭おかしいんじゃないのか!」
「うるさい奴だな。黙って孕む準備してろ」
 
シャツの中で触手が蠢き、愛撫するかのような絶妙な力加減で体を撫で回した。特に乳首は重点的に責められ、触手の先端でコリコリと弄られたかと思えば、吸引されたり乳輪をそっとなぞられたりと、単調にならない責め方で翻弄される。
 
いくら気持ち悪く思っても体は刺激を快感に受け取ってしまい、全身が発情したかのように熱くなってきた。

「んぅ……んぁっ、やめろ、乳首吸うな……!」
「小さい乳首だな。もっとデカくして吸いやすいようにしてやらないと」
「やっ、あふぅ……! いやっ、乳首大きくするな、あぁっ」
 
乳首が強く吸引される。戸羽は体をのけぞらせながら感じ、都合のいいように体をつくり変えられていく感覚におののいた。
 
抵抗すらできない悔しさと恐怖で胸が張り裂けてしまいそうだった。戸羽は快楽に緩む顔を必死に強張らせ、目の前の怪人をにらみつける。

「おっ、まだ反抗的な態度をとるのか?」
 
戸羽が睨みつけているのに気がついた怪人は、怒るどころか馬鹿にしたように笑い、食いしばった歯がのぞく戸羽の口元へと太い触手を差し出してきた。
 
間近で見ると触手はまるで男性器のような形をしていた。先端は何か半透明の液体のようなものがにじみ出しており、甘ったるい臭いがする。

「こいつがお前を孕ませるんだ。口でしっかり挨拶しとけよ」
「うっ、おぇっ、気持ち悪いの近づけるな」
「いいから口開け、殺されたいのか」
 
首に絡みついた触手に力がこめられるのが分かり、戸羽は渋々口を開いた。すぐに太い触手が口に押し当てられ、無理矢理中へと入ってきた。甘く生臭いにおいが口いっぱいに広がり、鼻へと突き抜けていく。
 
戸羽はくぐもったうめき声を上げ、何度もえづいては胃の中の物を戻しそうになってしまったものの、「吐いたら殺す」という怪人の言葉に必死になって吐き気を抑え込む。
 
ようやく落ち着いてくると、戸羽は命令されるまま頬張っている触手に舌を這わせた。見よう見まねでフェラをして、亀頭の部分にキスをさせられた。屈辱をつのらせながらも、戸羽には早く怪人が満足するよう祈ることしかできない。

「よくしゃぶりついてるな。犯されるのがそんなに待ち遠しいか?」
「うぶっ、んぐぅ……! ぷはっ、だ、誰がそんなの欲しいもんか!」
「どうせそのうち泣いてせがんでくるようになるだろうよ」
 
スラックスの裾から細い触手が入り込んでくる。戸羽が狼狽えている間にも、触手は足から上へと這い上がってきていよいよ太ももまでやってきた。

「ひぃっ、な、何をするんだ!?」
「種付けする準備をするんだよ。いいからお前はこれでもしゃぶってろ」
 
再び口の中が触手でいっぱいになるが、今はそれどころではなかった。トランクスの中に入り込んだ細い触手の群れが股間を這いまわって、陰茎を撫でたり、会陰を伝って尻の割れ目をなぞったり、我が物顔で戸羽の下半身を弄ぶ。
 
与えられる刺激のせいで陰茎が緩く勃起し始めると、触手は尻を割開き、その先端を後孔にグリグリ押し当て始めた。

「んんっ!? んぅーっ! うぅっ、んううう!」
「尻に入ってくるのが分かるか? 本番はこんなもんじゃないぞ。せいぜい意識が飛ばないようしっかり気合い入れとくんだな」
 
自分の中へ異物が入ってくると、息苦しさや不愉快さに再び嘔吐を催してしまいそうだ。戸羽は触手でがんじがらめにされた体を必死によじりながら、苦しみから逃れようとした。だがいくら足掻いたところで徒労に終わる。
 
もはやこの怪人の言う通り、異形の子を孕むしかないのだろうか。最悪の未来が無数に脳裏に浮かび、無力感に支配された体から力が抜けていく。
 
視界は涙でかすんでいた。その視界に緑色の光が浮かび上がる。今までなかったはずの人工的な光に、戸羽はハッと我に返った。

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