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短編
2
汚れた体を洗い終わり、布団の敷きっぱなしになった部屋へと戻った茅は、早々にマガツを寝かしつかせた。やがて部屋は静寂に包まれ、自分やマガツの呼吸の音、肌の触れ合うかすかなだけがそこでしていた。
 
疲れ切っている茅もすでにまどろみながら、ふと眠りにつくまでのわずかな時間自分の身の上を、まるで走馬灯のように思い返した。
 
最初にここへやって来たのは子供の時だった。そしてマガツと出会ったのも同じ頃だ。家の中に見知らぬ扉があったから、好奇心から中へ入ってみるとこの部屋に繋がっていたのだ。
 
あの時は子供だったから、窓に格子がはまり、何もない狭い部屋のことなど不審に思うこともなかったし、自分と遊んでくれるマガツに恐怖を抱くこともなかった。

それに出たいと思えば、マガツが泣きながら引き留めてきたものの、簡単に出ることはできた。そのせいで印象が薄かったのか、幼少期の茅の記憶からマガツやこの部屋のことは消えていた。
 
そして二度目は大人になった後。久々に実家に帰省した夜、トイレに行く途中でまた見覚えのない扉を見つけ、つい開けてしまったことから再びこの部屋へとやって来てしまった。
 
子供の頃見た光景と何ら変わりないその部屋、そしてマガツの姿だったが、唯一子供の頃とは違っていることがあった。部屋から出られなくなっていたのだ。いくら扉を蹴破ろうとしてもビクともせず、いつしか茅も無駄なあがきをやめていた。
 
そんな中マガツはといえば、混乱、消沈する茅のことを喜ばせようと一方的に襲いかかり、無理矢理犯してくる。嫌だと言ってもやめてくれず、何か執着のようなものを感じ、茅は恐ろしく思った。
 
だが話してみると中身は無邪気な子供そのもので、わけの分からないことに巻き込まれ、情緒不安定な茅を一生懸命支えようとしてくれた。
 
そのおかげか、この部屋からもう出られないと分かった茅は、頭がおかしくなりそうなほどショックを受けたものの、どうにか今日まで正気を保つことができていた。
 
茅もその点については感謝していた。こんな異様な空間に監禁され、もしマガツがいなければ今頃不安と恐怖に押し潰されて死んでいたかもしれない。
 
だが持て余すほどたくさんある時間をかけ、あれこれ考えてみると、そのマガツが元凶であるかもしれないことにも気づいた。
 
何かを知っているかのような口ぶりに、十数年たっても変わらない容姿。それにこの部屋の座敷牢のようなつくり。
 
マガツは人間ではなく、そしてここに閉じ込められている。そう考えるのが自然だろう。
 
茅は他にも気になることがあった。外は墨で塗りつぶされたように真っ黒で何も見えないため、正確な時間は分からないが、少なくともここに来て数日はたっているはずだ。その間水以外のものは何も口にしていないにもかかわらず、食欲が一切湧いてこない。
 
さらに排泄などの欲求を感じることもなく、性欲や睡眠欲以外の生理的欲求がすっぽり抜け落ちてしまったかのようだった。
 
茅はどことなく自分が生きている人間ではなくなっていっているような気がして、それ以上深く考えるのが恐ろしくなった。気づくと体は小さく震え、恐怖に支配されそうだ。
 
以前もたまにこうなる時があった。自分ではどうにもならないほど不安が膨れ上がり、心を押し潰そうとしてくる。そんな時はマガツに頼み、快楽に溺れ何も考えられない状態になることで平静を保つようにしていた。

「マガツ……ごめん、今してくれないか?」
 
隣で寝ていたマガツを揺り起こし、茅はすがりつくように懇願した。起こされたマガツは眠たげな目をこすり、寝ぼけたように茅を見つめながらもこくんとうなずく。

「いいよ、茅がしたいならがんばる」
「悪い、すぐ済ませるから」
 
茅は申し訳なさそうにしながらマガツに唇を重ねた。舌と舌を絡めて官能を高め、手をマガツの着物の合間から滑り込ませ、敏感な部分へ忍ばせる。
 
キスのおかげかマガツのそこは半分ほど勃起していた。茅はさらに愛撫を加え、より硬さを持たせていく。 

やっと挿入できるくらいの硬さになると、茅は下の服を脱いでマガツの上にまたがった。徐々に腰を落としていき、硬く反り立ったマガツの陰茎を自分の中へ入れていく。

「うっ、も、もう少し……すぐ入れてしまうからっ、待ってろ……!」
 
挿入している陰茎が深々と突き刺さっていくほど性感帯を刺激され、茅は息も絶え絶えに腰を下ろしていく。一気に下せばすぐ終わるのだが、そんなことをしたら気持ちよさのあまり我を失ってしまいそうだった。
 
だから恐る恐る挿入していたのだが、不意にマガツの手が腰をつかんだかと思うと、そのまま一気に根元まで挿入させた。

「ああああっ、やっ、がぁっ……! まっ、できないっ、ま、待って!」
「茅は怖がりだからボクがこうやってお手伝いしてあげないとね。いいよ、そのままたくさん気持ちよくなってね」
 
茅の制止も無視してマガツは激しく突き上げてくる。最初は無理だとわめいていた茅も段々と火がついてきて、気づけば夢中で腰を振り、マガツが奥まで突き上げてくるのを楽しんでいた。
 
さっきまで膨らんでいた不安はもうどこにもない。視界はぼんやりして、怖かったはずの暗闇もうやむやになっていく。
 
今はただ、この快楽に溺れていたい。何も分からなくなるくらい滅茶苦茶にされるのを望むばかりだった。

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