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短編

扉の外からはこちらに近づいてくる足音が聞こえてきて、東坂はすべてあきらめたような表情をした。

「遅くなったな実則君。十分楽しめたか?」

能天気そうな声をした城木が、扉を開けてこちらを見た。

当然その視線は床に落ちてなお動き続けるバイブに注がれた。

城木は何も言わずにそのバイブを拾い上げると、スイッチを切って東坂の目の前に突きつけた。

「これはなんだ?」
「さっきまでちゃんと入ってたんだ。だけど少し気を抜いたら落ちて……」

とてもこんな話を信じるわけがないと思った東坂は、それ以上何も言わず静かに城木の目を見た。

城木は東坂に負けず劣らずのポーカーフェイスで、一体何を考えているのかさっぱり分からない。

しばらく無言の時間が続いたが、急に城木が笑い出したことによって区切りが打たれた。

「アハハハッ!! そんな勃起したまま真剣そうな顔しても、間抜けにしか見えないぞ」

急なことに東坂は呆気にとられ、笑い続ける城木の顔をまじまじと見た。

それに気づいた城木は眼の端に浮かべた涙を拭いながら説明した。

「もう帰っていいぜ。実則君の言った通り、隣に座ってた金髪の男が、実則君をはめたと吐いたんだ。まったく、とんだはた迷惑な野郎だ。しっかりと教育してやらないとな」

かたく結ばれていた縄がほどかれ、東坂は自由になった。

しかしずっと不自然な態勢で拘束されていたため、手足は痺れとてもすぐには動けそうになかった。

仕方がないので東坂は動けるようになるまで、椅子に座っていることにした。

「バイブを落としたのはお咎めなしなのか?」
「ああ? お仕置きされたかったのか? 残念だったな、無実の奴をこれ以上辱める訳にもいかないだろ。それに今は色々と忙しいんだよ」

城木はそれだけ言うと、東坂を立たせるため手を貸した。

「ん? 勃ったままだったな、そういえば。どうする、俺がささっと抜いてやろうか?」
「自分でやる、便所はどこだ? あと服も返してくれ」

つれない東坂の態度に城木は不機嫌になりながらも、東坂の所持品を返しトイレの場所を教えた。

服を着た東坂はズボンの前の方を押さえて、急いでトイレへ駆け込んだ。

二、三分程たつと、東坂は深いため息をつきながら元の部屋へ戻ってきた。

城木は何も言わなかったが、顔はニヤついていて東坂の顔をじっと見ていた。

東坂はそれに対して何も言及せず、城木からお詫びの品だという分厚い茶封筒をもらうと、中身も確認せず早くここから立ち去ろうとした。

すると城木がそのうしろ姿に語り掛けてきた。

「それで、結局後ろの方だけでイけたのか、実則君?」

東坂は珍しくハッとそちらの方を見て、顔を赤らめた。しかし何も答えず、すぐに前を向くと駆け出して行った。

城木は面白そうにクスリと笑うと、そのうしろ姿を見届け、自分の仕事に戻るのだった。

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あきゅろす。
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