短編
1
俺の任務はジャングルの奥地に陣取るイカれた男を暗殺することだった。
麻薬の生産を取り仕切ってあらゆるマフィアに売りさばく。おまけに自分を将軍と名乗り、ジャングル一帯を自分の国にしていたその男の存在は、排除すべき対象以外の何ものでもない。
俺はそんな将軍を始末するため、他の数人とともに部隊を組みジャングルの奥地へ向かっていた。
だがそんな部隊も俺を残して皆死んだ。よりによって一番経験の浅い俺が生き残り、他の四人は機関銃の掃射で皆肉片になって死んでいった。
原因は明快。俺たちをサポートするはずの情報局が、どうやら誤ったナビゲーションをしたようで、俺たちを敵のど真ん中へと導いたのだ。
将軍の兵に囲まれた俺たち暗殺部隊は捕虜にされ、俺以外の隊員はその場で蜂の巣にされた。
すさまじい銃声と断末魔があたりにこだまし、何秒とたたずに人の形をしていた仲間はグズグズの肉塊になった。
どうして俺だけが助かったのか、それは実にくだらない理由だった。
俺の顔が将軍の好みだったから。ただそれだけだ。
本当にくだらない、まったく反吐の出るくらい酷い理由で俺は仲間を差し置き一人生き残ってしまったわけだ。
生きていれば望みはある、そんな言葉は今まで何度も聞いてきた。しかし俺は、もうその戯言を信じる気にはなれない。
いくら時間を浪費したって、希望なんかほんの少しも見えはしなかった。
「さっさと入れこのグズ。ったく、最近すっかり締まりが悪くなりやがって。俺たちを満足させられないなら、おめえもお仲間みてぇにミンチにしてあの世に送ってやるからな」
俺のことを乱暴に牢へ押し込みながらそう言う口髭の男は、腹立ちまぎれに倒れている俺へ蹴りを入れ、惨めなこの姿を嘲笑った。
それで満足したのか、男は珍しくこれ以上俺のことをいじめることもなく、牢の鍵をかけて足早にこの場から立ち去った。
俺はその背に一言罵倒でもしてやりたかったが、残念ながらその気力はもうこのボロボロの体には残っていなかった。
俺は捕虜になって以来奴らの慰み者だ。毎日のように嬲られては、性欲やら破壊衝動やらを解消するための生贄にされている。
痣だらけの体を毛布で包み、俺は冷たい床に横たわった。
ここでは俺は人間扱いをされていない。したがって服すらも着ることを許されず、薄いボロ布のような毛布一枚を服の代わりに身に着けていた。
体中が痛み、ケツの穴から精子がダラダラと流れ出す。今日はずいぶん犯されたから、いつもより精子の量も多かった。
俺は奴らの汚い精子を穴から掻き出すと、かすれた声を出した。
「はぁ……今日もずいぶん手酷くやられたよ。毎日毎日奴らもよくやるよな」
俺は毛布に包んであった人間の右手に話しかけた。
この右手は肉片になった仲間の唯一残っていた部分だ。それを悪趣味な将軍が親切にも拾い上げ、防腐処理を施してはく製にしたのち俺に与えたのだ。
まったく酷い話だが、極限状態にあった俺の正気を引き留めてくれたのは、皮肉にもこの右手だった。
誰のものかも分からないその右手を、俺は勝手に親しかった一つ年上のブロウだと思うことにしていた。
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