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短編

僕は阿木さんのお尻からバイブを引き抜いてあげながら、可愛く震えるその体を優しく撫でた。

ようやくバイブの責めから解放されると、阿木さんは緩みきった表情を僕に見せてくれた。

「泣かなくていいんですよ。おもらしくらい気にしてませんから」
「嫌だ、こんな……こんな仕打ちあんまりだ」
 
阿木さんのプライドはおもらしをしてしまったことで酷く傷ついているらしく、僕がいることも気にせずめそめそと泣き続けている。僕はそんな阿木さんにかける言葉が見つからなかった。

しかし、とにかく阿木さんとベッドを綺麗にしないといけないので、僕は嫌がる阿木さんを抱えて浴室へと連れて行った。

おしっこで汚れてしまった股や足を綺麗にし、今日はベッドが使えないのでひとまずソファーで寝てもらおうとリビングへ連れていく。

「何が望みだ! クソ、なんでこんな目に遭わないといけないんだ。俺が何したって言うんだよ!」
 
ソファーに座る阿木さんは、ヒステリーでも起こしたかのようにわめき、僕に当たり散らした。

まあ、いい年した男がおもらしをして、なおかつそれを見られてしまってはヒステリックにもなるだろう。
 
やがて一通り泣いて落ち着いたのか、阿木さんはようやくわめき散らすのをやめた。その代わりむっつりと黙り込んで、僕の方を決して見ないようにしていた。

「ねえ、今日は僕も悪かったです。だから機嫌を直してちょっとは話してくださいよ」
 
当然僕の言葉に返事はなく、阿木さんは僕を一瞥し不機嫌そうに顔を背けた。

しょうがないので僕は汚れたベッドのシーツを洗い、それが終わると阿木さんの隣に座ることにした。
 
あまりに気まずい雰囲気が部屋一帯に流れる。僕は阿木さんに手を出すどころか話しかけることもできずにいた。

しかし意外にも重たい沈黙を阿木さん自ら破ってくれた。

「一体何を考えているんだ……昨日は強引に犯したくせに、今は話しかけることだってしない。猪飼君は二重人格か何かなのか?」
「ち、違いますよ。だってさすがにこの状況は気まずくて……僕、その……暴走気味になることがよくあって、自分でも止められない時があるんです」
「それで俺を誘拐、監禁した挙句レイプしたのか?」
 
何も言えず再び沈黙が訪れた。確かに阿木さんの言う通り、僕のやってることなんて所詮卑劣な犯罪だ。
 
でも僕は、それを認めたくなくて阿木さんに追いすがった。

「でも僕、阿木さんのことが好きで……」
「好きだったら何してもいいと思ってるのか。俺のことはちっとも考えないで、自分の好き勝手にしていいのか?」
 
阿木さんの言うことは全部正論で、正論だからこそ僕を苦しめた。

「猪飼君がこんなことしたところで、俺の気持ちが変わるはずないだろ。仮に変わったとしても、それは君が好きなんじゃなくて、恐ろしいから無理矢理変えているんだ」

阿木さんはそう言いながら僕を凍てつくような目で見ている。僕は今まで信じていたものがガラガラと音を立てながら崩れ落ちていくような、そんな気分を味わっていた。

僕は自分の欲望のために、阿木さんのことも考えず嬲ってきた。被害者の阿木さんが僕に振り向いてくれることなんてあるわけがないんだ。

阿木さんは僕を冷たく見下ろしている。一体どうすればいいのか考えたが、答えは出ず代わりに呼吸が苦しくなってきた。
 
阿木さんがこんな僕を許してくれることなど、あり得るのだろうか。

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