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短編
5
「昨日はどうだった? ずいぶん可愛がってもらえたようだな」
「強姦の次はSMプレイかよ。お前もとんだ好き者だな」

弱々しく笑いながら軽口を叩く傭兵の態度が気に入らず、大尉は持っていた鞭で傭兵の頬を打ちつけた。

バシッという乾いた音がして、傭兵はその場に倒れこむと痛みのあまり殴られた箇所に手を当て、庇うように包み込んだ。

皮膚が裂け、ヌルヌルとした血が指の間から流れ落ち、傭兵は痛みに顔を引きつらせる。

「お前がまだ仲間だったら、今のくだらない冗談程度、笑って済ませてやっただろうな。でも、今のお前は俺の敵だ。容赦するつもりはないから覚悟しておけ」
 
しかし傭兵はその言葉に不敵に笑いかけ、真意の読めない瞳を大尉に向けた。

「俺が気に入らないからって、拷問してるほどお前は暇なのか? もっとやることはあるぜ、敵はもうすぐそこまで侵攻してきてるんだから――」
 
すべて言い切らないうちに、傭兵の鳩尾に大尉の鋭い蹴りがめり込み、嗚咽を漏らしながら傭兵は身をかがめた。

そこへさらに、鞭が振り下ろされ傭兵の背中に赤い跡を刻む。
 
血の流れる一筋の傷跡ができると、大尉はニヤリと笑ってそこを鞭の先でつつき、痛みに顔を歪める傭兵の反応を楽しんでいた。

「痛いか? もうその減らず口を叩くこともできないだろう」
「どうかな、俺がよくしゃべるのはお前が一番知ってるだろ。一緒に戦場を這いずり回っていたあの頃は楽しかったなあ。仲間たちは銃弾にその身を貫かれ、病に侵され、次々に物言わぬ肉塊になっていく……」
 
演説するように声高々に語る傭兵へ、再び大尉の鞭が振り下ろされる。今度は一度では終わらず、二度、三度と傭兵の背中に傷を刻んでいった。
 
ようやく大尉が鞭を振るう手を止めると、傭兵は苦しそうに息をつきぐったりと床に顔をつけていた。

しかし傭兵の心はこの程度では折れず、無理矢理酷薄そうな笑みを浮かべると、大尉をなじり、貶めた。

「お前は国のためっていう建前で、自分の歪んだ欲望を満たしてるんだ。ひとつ予言してやるよ。お前はこの戦争が終わればお払い箱だ、きっと自分の境遇を恨む日がくるぜ」
「黙れ!」
 
空を切り裂いて鞭が振り下ろされる。鞭は傭兵の皮膚を裂き、さらに血を流させた。

「お前に何が分かる! お前のような中途半端で責任感も皆無の奴に!」
 
大尉は目を真っ赤に充血させ、鞭を振るう手は屈辱のあまり震えていた。

「お前のせいで仲間が死んでいくんだ! お前がいるから昨日だって部下が一人、手足をもがれ死んでいった!」
 
感情的な大尉の言葉はほとんどが八つ当たりもいいところで、傭兵はどこか冷めた気持ちでそれを聞いていた。

鞭はその間傭兵の背中に傷をつくり、酷いみみず腫れを残していく。
 
鞭打ちが終わる頃には、傭兵は最早しゃべる気力もなく、痛みに顔を歪ませて口を魚のようにパクパク開閉させていた。
 
そんな傭兵の傷だらけの背中に大尉は指を沿わせ、血にまみれた爪を傷の酷い部分に突き立てた。

傭兵はたまらず体を痙攣させ、声にならない叫びを上げる。

「痛いか? お前に殺された仲間たちの痛みはこんなものじゃないんだ。これ以上の苦しみを、お前に必ず与えてやる」
 
爪の突き立てられる強さは次第に増していくが、傭兵は歯を食いしばりそれ以上何も言わぬよう、必死に耐えていた。

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