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シリーズ
7
「秋はすっかり俺の女になったぜ。奥を突いてやるとギューって俺のチンポを締めつけてくるんだ。きっと中は俺の形になっちまったんだろうな」
 
嫌味な笑みが間近に迫り、古座は心底悔しそうな表情を浮かべた。だが怒りはすぐに快楽に流され、もとの情けなく緩む顔に戻ってしまう。

「あ? 言いたいことがあるんならもっとはっきり――」
 
静かな部屋に鈍い音が響いた。そしてすぐ後に鐘辻が床へと崩れ落ちる音が続く。

鐘辻は古座が拘束されていることで抵抗できないと高をくくり、顔を近づけ過ぎたのだ。

そして油断していて無防備な額へ、古座の頭突きが吸い込まれたというわけだ。
 
あまりの衝撃に鐘辻はすっかり気を失い、古座も額から一筋の血を流している。だが鐘辻が倒れたところで現状がどうにかなるわけでもなく、古座は頭痛と迫りくる快楽の両方に悩まされた。

「た、珠樹、今の音は……おい! どうしたんだ!」
 
不審な物音を聞きつけ、疲れ切った体を引きずり様子を見に来た雪間は、目の前の惨状を見て慌てた様子で駆けつけた。

「んふぅ、んっ、んん、んうう!」
「落ち着け、まずこのバイブを抜くからな」
「んうっ!!」
 
バイブを引き抜いた衝撃でまたもや古座は射精してしまい、気まずそうに雪間から顔を反らす。

しかし雪間は少しも気にすることなく、口を塞ぐガムテープと口内の布を取り去り古座の拘束を解いていった。

「雪間さん、そんなタオル一枚で……マ、マジであいつに女にされたの?」
「変なことを吹き込まれたんならすぐ忘れろ。それにしても相変わらずの石頭だな。でも一応手当はしておこう」
 
ガーゼの代わりにハンカチを額に押し当てて、流れ落ちる血を止める。無地の白いハンカチに染み込む血が赤い花を咲かせた。

雪間はハンカチを古座に押さえさせると、足元に倒れる鐘辻を見下ろし、深いため息をついた。




体を洗って着替えを済ませ、二人は必要なことは一つを残してすべて済ませた。そしてその一つを終わらせるため、疲れ切った体に鞭打を打つ。

「雪間さん、ひとつ殺すくらいの剣幕でやってくれよ。それくらいしなきゃ分からないだろうからな」
「言われなくたってそうするつもりだ」
 
額にガーゼを当てた古座のはやし立てる声に面倒くさそうに答えた雪間は、足元の鐘辻に目をやった。

鐘辻はいまだ気絶しており、腕と足を縛られ床の上でぐっすり眠っている。しかしカルキ臭い水道水を浴びせかければ、そんな浅い眠りはすぐに覚めていった。
 
溺れていたかのように口に入った水をゲホゲホと吐き出し、鐘辻はせわしなく目を動かしながら自分の置かれた状況を必死に探っているようだ。

定まらない視線は十分過ぎるほどに部屋中を見回した後、ようやく雪間の顔に定まった。

「しゅ、秋……何をしてるんだ。俺は……うう、頭が、割れそうだ」
「頭突きがずいぶん効いてるみたいだな。少しは反省しただろ?」
「……まだ分かってくれないのか、俺の気持ちに。やっぱりもっとグチャグチャに犯して、俺のものにしねえと」
 
狂信的とも言えるまでに、鐘辻は自分の中の論理にのっとり行動しているようだ。

これではまったく話にならない。雪間は不愉快そうに顔を歪め、最後の手段として残していたバタフライナイフに手を伸ばした。
 
慣れない手つきで刃を出して、鋭く光る刃先を鐘辻の口元へ突きつける。

鐘辻は目を大きく見開いて、瞳の奥を恐怖で凍りつかせた。だが恐怖の対象は目の前の鋭利な刃物ではなく、それを握る雪間の方だった。

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