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シリーズ
1
常軌を逸脱した光景が目の前に広がる。

俺は自分の気が狂い幻覚でも見ているんじゃないかと疑ったが、少なくとも目の前の光景は現実のようだった。
 
俺に見つめられ浅ましく快楽を求め自慰をするブラン。微動だにせず、体をルーフスにまさぐられ苦悶の表情を浮かべるシュヴァルツ。

俺に至っては動くどころか表情を変えることもできず、少し離れたところで一人突っ立っていた。
 
視線はブランに釘づけで、そういうつもりはなくとも自然と視姦してしまう。俺に見つめられるブランは、興奮を隠さず声に出している。

「ひっ、うぅ……やっ、出る! 見ないで、お願い……んあっ、見ないで……!」
 
見ないでと言われたって、俺にどうすることもできないのはブランだって知っているはずだ。

しかし奴は分かっていても俺にすがるような視線を送る。俺は自分の表情一つ動かすことができないのに。

「ああっ、やだ、僕……っうう!」
 
やけに可愛い声を出しながら、ブランは自分の手で果てた。荒く息を吐くたび淫靡な吐息も一緒に漏れ、やがて力なくその場に座り込む。

あられもない姿を隠そうともせず、すすり泣くブランに俺は同情に似た気持ちを抱いた。
 
だがいつまでもそんな感傷に浸っている場合ではない。俺はようやく自由になった視線をブランの背後にいるシュヴァルツへ向けた。
 
どんなに長い間一緒にいる相手だって、知らない顔を一つか二つは持っている。シュヴァルツが見せた顔は、まさに俺の知らない顔だった。怒りともあきらめともつかない、そんな顔だ。

「素晴らしい体ですね。でも精神はもっと素晴らしい。このまま精気を吸い取れば、僕の寿命もあと三百年は延びるでしょうね」
 
何らかの魔術によって動くことのできないシュヴァルツを、ルーフスは背後から抱き服の上から撫でまわす。

さっきまで耳を舐めていた舌は、今や首筋を滑っていた。歯形が残るほどに首筋を噛まれ、青白い肌に赤い跡が残っていく。吸血鬼が首筋に噛みつかれるなんて、なんとも変な光景だった。

「どうですか、精気を抜かれていくのは気持ちいいでしょ? あなたがギリギリ生きていける分の精気は残してあげますからね。像にして飾らなきゃいけないんですから」
「き、貴様の趣味の悪さも……ここまでくると、見上げたもの、だ……くっ!」
 
シュヴァルツは苦しみ抜いているというよりも、快感に流されまいと必死になっているように見えた。

そういえば俺も前に夢魔とかいう奴に精気を抜かれたが、あの時も心と体がなんとも言えない愉悦で満たされていた。

「ああ、駄目じゃないですか服を汚したら。仕方のない人ですね」
 
ニヤニヤ笑うルーフスは、シュヴァルツの下着の中に手を入れ指先に白く粘つくものをまとわりつかせ見せてきた。

あれは精液だ、いつも俺の腹の中に出されている。いつもならなんとも思わないのに、今に限ってはシュヴァルツを奪われたような気がして悔しかった。

できることならあの仮面のように笑顔を張りつかせた顔を引き剥がしてやりたい。そして苦痛に歪ませてやりたかった。

滴る血で奴の顔を染め、俺に慈悲を求める声を上げさせてやりたかった。

しかし俺には何もできない。一体どんな代償を払えば、この願いを叶えられるのだろうか。

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