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シリーズ
5
時間の感覚も曖昧な中、古座はようやく車から下された。かと思えばどこかに向かって歩かされる。

この後に及んでも頭から袋を被せられたままなので、時折小さな段差につまずけば、そのまま派手に転んで体のあちこちに痣と擦り傷をつくっていた。
 
たまに入る蹴りや嘲笑に耐えながら、古座は屈辱を押し殺していると、急に立ち止まれと言われ強引に椅子に座らされた。

「んじゃ、尋問タイムといこうか。木野井の人には言えねえような秘密、じゃんじゃん吐いてもらおうぜ」
 
頭の袋が剥ぎ取られる。ようやく開けた視界には、こちらをニヤニヤながめる柄の悪い男たちがずらりと並んでいて、酷く不快な気分になった。
 
他に見えるものは、妙に薄暗く荒らされ放題の古めかしい部屋、いくつもシミのついた敷きっぱなしの布団、片隅に放置されたロープや手錠。

何故か女物の薄いピンク色の小さな肩掛けバッグも転がっていて、普段ここで何が行われているのか薄っすら感じ取った古座は反吐が出そうな気分になった。

「生意気なツラしてんじゃねえよ」
 
頬を平手で叩かれ、口の中に押し込められていた猿ぐつわを外された。

「てめえ、名前はなんていうんだ?」
「なんでそんなこと言わなきゃ」
「いいから答えろクソガキ」
 
また頬を平手で叩かれる。今度はさっきより強く、熱をもった頬がジンジンと痛んだ。
 
この場で暴れるにしても、未だ両手は後ろで縛られたままで、しかも六畳ほどしかない室内で四人の男を相手に戦うのはさすがに分が悪く、古座もここは男たちの言う通りにすることにした。

「……古座珠樹」
「へへ、名前まで男か女かよく分かんねえな。ちゃんとチンコついてんのか? まあ、んなことはどうでもいいや。それよりお前、木野井とヤってんだろ? あいつどんな変態プレイしてんだ?」
「なんか勘違いしてるみてえだけど、俺はあんな野郎とは一切関係ないからな。むしろ木野井は俺のこと嫌いだろうし」
「はあ? 嘘ついてんじゃねえよ!」
「この状況でそんな嘘つくわけないだろ! 俺は本当に木野井となんか付き合ってない!」
「じゃあなんでお前は木野井の車に乗ってたんだ?」
「無理矢理乗せられたんだよ。あいつ俺のこと逆恨みしてるから、あのままどっか連れてって脅迫するつもりだったんだろ」
「なんだよそれ! じゃあ木野井の弱みもなんも知らねえのかよ」
 
古座の口ぶりから、本当に木野井の愛人ではないというのが男たちにも伝わったようだ。動揺が広がり、あたりがざわつく。
 
このまま事実を織り交ぜつつ都合のいい理由をつけ、あわよくば解放されようというのが古座の算段だった。
 
だがそう簡単にはいかず、事実を確認するため携帯や財布などを物色されたり、当然のように質問攻めにもあった。

「本当に木野井の愛人じゃねえんだな? 嘘ついてたら殺すぞ」
「だから本当にそんなんじゃないっての」
「木野井に逆恨みされてるって言ってたよな? 一体何を恨まれてんだ?」
「それは……色々あるけど、木野井がちょっかいかけてる奴と友達で、あの野郎何勘違いしてんのか俺に嫉妬してたまに嫌がらせするんだよ」
「へえ、案外みみっちい奴なんだな」
 
適当な作り話で木野井の評判は下がっていくが、そんなことはどうでもよかった。むしろほんの少しせいせいした気にさえなる。
 
携帯を物色していた男たちも、連絡先や履歴に木野井らしき名がないと言い、落胆の声を上げた。

「んだよ……! せっかくいい拾いもんしたと思ったのにとんだ無駄骨じゃねえか!」
 
苛立たしげに男が怒鳴る。
 
この際怒りをぶつけられ、多少暴行を受けるのは必要経費だと思うことにして、早く解放してくれないかと古座は切に願った。
 
ところがそれまで黙っていた男たちの中の一人が、古座をジッと見つめながら近寄ってきた。

「なあ、結局こいついらないんなら俺がヤってもいい?」
 
一瞬にして頭から冷水を浴びせられたような気持ちになった。

「木野井と関係ないんだったら、後はどうしようが自由なんだよな?」
「別に構わねえけどお前ホント物好きだよな。そいつそんな顔してても野郎だぞ」
「へへ、突っ込める穴があるんならどっちだって構わねえよ。それにアナルってきつく締まるから気持ちいいんだぜ」
 
ニヤニヤ笑いながら近づいてくる男に、古座は嫌悪感と得体の知れない恐怖を感じた。伸びてくる手から逃れようと身をよじり、バランスを崩し椅子から転げ落ちる。

「い、嫌だ! 俺のことレイプするとか頭おかしいぞ!」
「おーっと、さっきまで余裕そうだったのに、急にビビりだしたな。そういう顔されるとますます犯したくなるんだよ」
「うわっ、触んな変態! クソっ、マジでイカれてるだろ! やめろって!」
 
抵抗も虚しく古座は薄ら笑いを浮かべる男に引きずられ、シミのついた布団の上へ突き飛ばされた。

「ギャーギャー泣きわめくより、そうやって生意気に抵抗された方がこっちも興奮できるぜ。ほら、こっちにケツ向けろ」
「ま、待って! 一旦待てって!」
「うるせえな、いい加減覚悟決めろ」
「だから人の話聞けって! なあ、ケツでヤるなんて汚いだろ? そこまで言うんだったら代わりに口でするから、それで勘弁してくれよ?」
 
自らそんな提案をさせられるのは何よりも屈辱的だったが、犯されるよりはマシだと言い聞かせ、古座は男に懇願した。上目遣いで男を見つめ、媚びを売るように猫撫で声で話す。
 
その情けない様子に、古座を犯そうとしていた男どころか、周りで見ていた者たちもゲラゲラと下品な笑い声を上げ、口々に古座のことを揶揄した。

「犯されたくないからって必死すぎだろ! マジでウケるわ!」
「あーあー情けねえなあ。普通自分からそんなこと言わねえだろ」
「こりゃ普段からしゃぶってるんじゃねえの?」
 
悔しさを噛み殺し古座は目の前の男を見上げる。もったいぶるように考える素振りを見せた後、男はおもむろにズボンと下着をおろすと、古座の鼻先に陰茎を突きつけた。

「そこまでお願いするんだったらしゃぶらせてやるよ。さっさと口開けろ」
 
すえた臭いの萎えたモノが唇に押し当てられる。古座は覚悟を決めると、口を開け男の陰茎を口内へと迎え入れた。

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