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シリーズ
1
「てめえらいい加減このクソ忌々しい縄をほどけつってんだろうが! 何笑ってやがる、そうやって馬鹿みてえなツラして笑うくらいしか能がねえくせによお!」
 
凄まじい怒号が寂れた海辺のとある倉庫に響く。声の主は学生と言ってしまえば通用するような、どこか幼さを残した男だった。
 
その男、古座珠樹(こざ たまき)は縄できつく縛られ、「縄をほどけ」と目の前にいる柄の悪い男たちに向かってしきりにわめいていた。

そんな古座の隣では、同じように縛られた古座より年上の男、雪間秋(ゆきま しゅう)が、顔を真っ青にして古座をどうにかなだめようと努めている。

「馬鹿、珠樹! それ以上煽ってどうするんだ、こっちはあいつらの機嫌ひとつで生死が決まるんだぞ! いいからもうしゃべるな」
「そんなこと言ってもさあ、雪間さんは腹立たないのかよ」
 
古座は周りの男たちのことなどお構いなしに、呑気に口を尖らせ雪間に文句を言っている。

段々周りの男たちが殺気立ってきたのに気づいた雪間は、古座を黙らせようと自由の利かない体で体当たりを食らわせた。

「痛ってぇ! 何すんだよ雪間さん!」
「だから、いい加減にしろよ! 死ぬんだったらお前ひとりで死ね!」
「酷い! それが相棒に向かって言うことかよ」
 
二人はいがみ合い今にもいざこざが起こりそうだったが、周りに立っていた男たちのうちの一人が咳払いをしてそれをやめさせた。

「お前ら自分の状況分かってるのか? ハァ、まったく緊張感のない奴らだな」
「なんだとてめえ」
 
古座が再び男に突っかかろうとするのを雪間はどうにか止め、緊張した面持ちで男の方を見た。さっきまで古座と言い合いをしていた時とは違い、今はとても落ち着き払った顔をしている。
 
男は真面目に話をできるのは雪間の方だと確信し、雪間の近くへ来ると隙のないその顔を覗き込んだ。

「お前らが素直に忠告に従って、うちの周りを嗅ぎまわるのをやめていれば、こうならずに済んだのにな」
「こっちにも事情があるんだ。何も自分から好き好んで、あんたらみたいなヤバいところを調べていたわけじゃない」
「ふーん、それは依頼元がこれまたヤバいところで、仕事しないと殺すって脅されたからか?」
 
男の言葉はまさにその通りで、雪間と古座の二人はとある筋の人物に、目の前の男たちの組織について調べるよう依頼されていた。

しかし依頼とはよく言ったもので、実際は脅しによる強制に近いものだった。

「分かってるなら解放しろよ。可哀想だと思わないのかよ、なんの罪もない一般市民が脅されて無理矢理危ない仕事させられてるんだぞ」
 
横から茶々を入れてきた古座をたしなめ、雪間はなんとか男を説得しようと試みるが、結局のところその努力が実を結ぶことはなかった。

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あきゅろす。
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