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シリーズ
6
「君はなかなか頑固というか我慢強いというか。この状況でまだ反抗できるとは思わなかったよ」
 
先生は雪間の目の前で携帯を取り出すと、何やら悪趣味に薄ら笑いを浮かべながら弄り始めた。

それが自分の携帯であると気づいた雪間はますます顔つきを険しくして、何をしているのかと先生に尋ねた。

「中を少々拝見させてもらったよ。こういうものには個人情報が詰まっているから、おのずと持ち主の人となりも見えてくるものだね」
「……それを返せ」
「人には言えない趣味の一つや二つ、ないものかと検索履歴やネットショップの履歴なんかを見てみたんだが君はドがつくほど真面目だね。オナニーのオカズすら見当たらなかったけど、普段はどうしてるのかな?」
「気色悪い! 誰がそんなこと話すか」
「ああ、そうか。君には可愛い相棒がいたね」
 
雪間の目の前に突きつけられたのは、液晶画面に映る古座の姿だった。ジョッキ片手にのんきに笑ってピースしている。恐らくどこかで飲んだ折りに、酔った勢いで撮ったものだろう。
 
雪間はごくたまに、古座にねだられてそういった写真を撮ったり、からかうつもりで寝顔や酷い寝相の写真を撮ったりしていた。
 
それを見てしまったからには、自分たちの関係がただの仕事上のパートナー以上のものであるということは容易に推し量れてしまうはずだ。現に先生はニヤニヤしながら雪間のことを見下ろしている。

「仲がいいみたいだね。同棲までしてるんなら別に自分でしなくてもいいわけだ」
 
メールやチャットから古座との普段のやり取りまでも、先生は見てしまったらしい。プライベートに土足でずかずかと踏み込まれたような気になり、雪間は酷く気分が悪くなった。

「俄然君のパートナーに会ってみたくなったね」
「冗談じゃないぞ。珠樹をお前みたいな異常者には絶対に会わせない」
「なに、君がいくらわめこうと向こうから会いに来てくれるさ」
 
先生は何やら携帯を操作し始めた。何か文字を打っているのか画面を親指でタップしている。ものの数十秒で先生は携帯を操作していた手を止め、自慢げにその画面を雪間の鼻先へ突きつけてきた。
 
そこに映っていたのは、普段古座との連絡で使用していたチャットアプリの画面と、送信前の短い文章。

『大事な話があるから悠木を連れて”ここ”まで来てくれ』
 
ご丁寧に地図アプリを使用して、”ここ”の場所を示す位置情報まで添えてある。確かめるまでもなく、その位置情報が示すのは雪間が今いるここ、先生の家にあたる場所であった。

「君の文体は短くて素っ気ないから真似がしやすくて助かったよ」
「クソッ……! なりすましなんかしたところで珠樹や悠木が怪しむはずだ。もし警察でも呼ばれたらお前たちは終わりだぞ」
「怪しんでくれた方が好都合だよ。君のことを助けに二人が来てくれるだろうからね。悠木君は逃げるかもしれないけど、もう尻尾はつかんでいるから、君たちの後に迎えに行けばいいだけの話だ」
 
先生は雪間の携帯をポケットへしまうと、近くの机に置かれていた注射器に手を伸ばした。空の注射器に何かの液体を吸わせ、針先を雪間の腕に向けてくる。
 
シリンダーの中身は確実に何らかの薬物だ。雪間は全身にじっとりと汗をにじませながら、本格的に焦りを覚え、拘束された体を必死によじった。

「やめろっ、何を打つ気だ!」
「そう怯えなくても、麻薬や覚せい剤の類ではないよ。これは君の感覚を普段の倍過敏にさせ、常に興奮状態にするだけの薬だ。依存性はないよ」
 
説明されてもほとんど危険な薬物のように思える。そんなものを体の中に入れたくないと、雪間は必死になって抵抗するが拘束具の取りつけられた体は思うように動かず、さらに自分をここまで運んできたあの男が注射しやすいよう左腕をしっかりと押さえてきた。
 
針がスッと肌を突き破り、体内へと入っていく。痛みはほんの少しだが、雪間は今にも叫び出しそうなほど顔を歪めていた。
 
先生がシリンダーを押し出すと液体は音もなく雪間の中へと流れ込んでいった。ものの数秒で注射は終わり、雪間はすぐに解放された。とはいえ、椅子には縛りつけられたままだ。

「君は警察さえ来ればどうにかなると思っているようだが、ああいうのは動き出すまでに時間がかかるんだよ。事件が起こっているかも分からなければなおさらね。それまでに君を篭絡してしまえばこちらのものだ」
「か、簡単に言いやがって……!」
 
雪間がにらみつけるのも気にせず、先生は手近なテーブルに置いてあったローションへ手を伸ばした。ふたを開け、ねっとりしたそれを雪間の股間に垂らしていく。
 
冷たい粘液がゆっくりと会陰部を伝い肛門に垂れてくると、雪間は顔を引きつらせゾクゾクと湧き上がってくるむずがゆい感覚に歯を食いしばった。薬の影響かこそばゆい刺激ですら快感に感じてしまう。
 
先生の指は雪間の穴へローションを塗り込みながら、徐々に中へと入っていく。尻の中を探るように、指先がグリグリと肉壁を擦って刺激していた。

「君は我慢強いから、痛みや恐怖で追い込むよりも、こうやって快楽漬けにした方が効果的だと思うんだ」
「くっ、こんなことをして、うっ、うぅ、俺を言いなりにさせられると思ってるのか?」
「人聞きが悪いな。私はただ君を一旦まっさらな状態にしたいだけだよ。君は、はなから私のことを異常者だと決めつけているだろう? まずはその凝り固まった考えをリセットしてもらおうか」
「んっ……! やめろっ、そんなところ……あっ!」
 
指先が前立腺をかすめ、雪間はのけぞるように体をわななかせた。しまった、と思った時には手遅れで、雪間の弱点を見つけた先生はそこばかりを責めてくる。
 
雪間は手足の拘束をガチャガチャといわせながら悶えた。ぽっかり空いた口からは獣のような声がしていた。

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