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シリーズ
6
カーテンの隙間から漏れるまぶしい光、古座は朝が来たことを確信しながら目を開いた。

「うーん……ん? 雪間さん、どうしたんだよ朝からスーツなんか着込んで」
 
寝起きの古座の目の前には、スーツ姿で外出の準備をしている雪間がいた。

「ああ? ちょっと用事があるんだよ。俺一人で行くから、お前は掃除とゴミ出しをしておけ」
「分かったけど……用事って何? 今日は別に仕事入ってないだろ?」
「仕事じゃなくて野暮用だ。お前も仕事がないからってダラダラしてるんじゃないぞ」
「分かったっての、はいはい、いってらっしゃーい」
 
古座に見送られて雪間は部屋を出ると、体重をかけるたび大きく軋む階段を下り、一旦立ち止まりながら携帯を開いてメールを確認した。

『仕事のことで大事な話がある。朝一で俺の家に来てくれ』
 
珍しく簡潔な文で、鐘辻は雪間を呼び出していた。普段なら私情で「会いたい」と言ってくる鐘辻のことは冷たくあしらっていた雪間だが、今回は仕事絡みということもあり、会わないわけにもいかなかった。だからこうしてわざわざ朝からスーツに着替え、鐘辻の家まで向かっていたのだ。
 
しばらく歩き、途中バスにも乗りながら鐘辻の家の前まで来た雪間は、緊張した面持ちで扉の前に立つ。鐘辻の家だというアパートはやや古いものの、少なくとも雪間たちの住んでいるところよりは環境的にもマシなようであった。

雪間が扉をノックすると、音もなく扉が開き、深刻そうな顔をした鐘辻が出迎えた。

「おはよう、秋。わざわざ呼び出してすまないな」
「別に気にしてない。それより大事な話って一体なんなんだ?」
「ひとまず中に入ってくれ。こんなところじゃ話しづらい」
 
もっともらしい鐘辻の言葉に、雪間もはやる気持ちを抑えながら家の中へと入った。鐘辻の部屋はそれなりに整頓されていて、狭いながらもあまり息苦しさは感じられない。雪間は初めて訪れた鐘辻の部屋にやや心を惹かれながら、それとなくあたりを見回していた。

「それで早いとこ仕事の話というのを聞かせてもらいたいんだが……」
 
雪間は鐘辻の方へと振り返り、用件を口にする。しかしその瞬間、なんの前触れもなく鐘辻の右フックがノーガードの腹部へ入り、思わず雪間はその場に膝から崩れ落ちてしまった。息をつくのも苦しいほどに、腹部は鈍い痛みを繰り返している。雪間の頭の中は一瞬で様々疑問があふれたが、まず口をついたのは殴られた理由についてだった。

「な、なんのつもりだ、お前……!」
 
しかし鐘辻は答えず、無表情のまま雪間を乱暴に抱き上げると隣の部屋へ連れていき、敷きっぱなしにされた布団へ投げおろした。
 
背中に感じる痛みに、雪間はうっとくぐもった声を上げる。腹部の痛みはなおもしつこく繰り返しており、さらに鐘辻が上へとのしかかってきたことで、逃げることは絶望的な状況へと追い込まれた。

「一体何をするんだ。こんなことしてただで済むと思ってるのか?」
 
雪間は鋭い眼差しで鐘辻を貫く。いつもならたったそれだけで鐘辻は委縮し、言われたとおりにするはずだった。ところが今日の鐘辻は、いくら雪間ににらまれようとまったく動じず、激しく怒りを燃え上がらせた目で雪間のことを見つめていた。

「秋はあいつのこと好きなのか?」
「は? あいつ? わけの分からないことを……」
 
困惑する雪間が眉をひそめると、鐘辻の怒りはさらに激しくなり、力任せにシャツのボタンを引きちぎって雪間の服を脱がせにかかった。

「やめろ! この馬鹿何する気だ!」
 
当然雪間の激しい抵抗を受ける鐘辻だが、今度は頬を平手打ちして大人しくさせると、素早くスラックスと下着を脱がせて、再び抵抗できないように両手を押さえてしまった。あらわになった裸体を眺め、しばし鐘辻は沈黙する。

もじもじと足を動かし、隠せもしない裸を隠そうと無駄な努力を続ける雪間の姿は、鐘辻の欲望をムラムラと湧き上がらせる。その欲望は怒りと混じり合うことでさらに激しいものとなり、鐘辻は衝動のままに雪間の唇を貪り始めた。

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