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シリーズ
3
再び訪れたビルは相変わらず活気は皆無に等しかった。もしや、もう診療所は閉められており、久長も誰もいないのではないだろうかと雪間は心配したものの、それは杞憂に終わった。

いまだ診療所には煌々とあかりが中を照らしており、中には久長のような人影がいまだいるようだったのだ。

「悪い、携帯落としてなかったか?」
 
そう言いながら雪間が部屋の中へと入ると、そこには何やら嬉しそうな顔をした久長が待ち構えていた。よく見れば、その手には雪間の携帯が握られている。

「ああ、やっぱりここに落としてたか。悪かったな」
 
携帯を返してもらおうと雪間は手を差し出すが、久長は手に持った携帯を一向に渡そうとしない。ずっと意味ありげな笑みを浮かべたまま、手を出している雪間の姿を眺めている。

いい加減じれったくなった雪間は久長から携帯を強引に奪い取ろうとしたのだが、久長は伸びてきたその手をつかむと、雪間の体を自分の方へと引き寄せた。

「何をする気だ!」
 
突然のことに驚く雪間だが、その体を抱きとめる久長は決して放そうとしない。そして目にもとまらぬ速さで白衣のポケットから錠剤のようなものを取り出し、自ら口に含むと強引に雪間へ口移しで飲み込ませた。
 
一瞬のことに雪間は唖然とする。しかしすぐさまハッと気を持ち直すと久長を突き離し、飲み込んでしまったものを吐き出そうとした。だが先ほど飲まされたものは完全に喉を通り過ぎてしまったようで、今さら吐き出すのは不可能だった。

「いきなりなんのつもりだ! 一体何を飲ませた!」
「まあまあ落ち着きなよ。別に毒の類じゃないから」
 
ヘラヘラと笑いながら久長は雪間へ携帯を投げ渡し、再びその体を抱こうとした。当然二度目は通じるわけもなく、雪間は久長を押しのけると敵意を剥き出しにした目を向ける。

「このっ、携帯も俺によりかかった時に抜き取りやがったんだな。こんな気色悪いことするために!」

久長が倒れかかってきた時のことを思い出しながら、雪間は目つきをきつくする。ところが久長はその目に臆するどころかむしろ嬉しそうに顔を歪ませ、雪間へ思いのたけをぶつけた。

「その目だよ! その蔑むような冷たい目で見られると私はゾクゾクするんだ!」
 
異様な熱気に気おされる雪間は、不愉快そうに顔を歪めた。

「黙れ変態、お前に構ってる暇はないんだ」
「ああ、もっと、もっと言ってくれ! ゾクゾクしてきたよ、ほら、こんなに私のモノが硬くなっている!」
 
久長は興奮気味にそう言いながら、無理矢理雪間の手をつかむとそれを自分の股間へ押し当てた。雪間の手に熱と確かな硬さが伝わってくる。

「気持ち悪っ、クソ、変なもん触らせやがって」
 
怒りと不快感のあまり口汚い罵声があふれ出し、雪間は勢いよく久長の手を振りほどくと、そのまま逃げ帰ろうとした。

しかし出口へ向かって歩き出そうとしたその時、不意に雪間の視界が大きく歪み、立っていられないほどのめまいに襲われた。体は突如訪れたその異変に抗いきれず、地面へ崩れ落ちる。意識は散漫になり、発熱したかのように体は熱い。そしてここから逃げなければという強い意志は、次第に弱々しい薄弱としたものになっていった。

「大丈夫? 心配しなくてもさっき飲ませた薬が効いてきただけだ」
 
にこやかに笑う久長に抱えられ、雪間は患者用のベッドへと寝かせられた。だがこの期に及んでも雪間は抵抗する様子を見せず、久長にされるがまま、ついにはねっとりした手つきの愛撫を受け入れてしまった。

「気持ちいいだろう? 段々硬くなってきてるね」
「やめろ、触るなぁ……うぁっ、んっ、はあぁ」
 
繊細な手つきで勃起しかけている陰茎を服の上から撫でられ、雪間は恥ずかしげもなく情けない声を上げる。飲まされた薬の影響か、自尊心は早々に砕かれ、自らの意思は弱々しいものになっていた。

「堕ちるのもいいけど、もっと楽しませてからにして欲しいな。君のその冷たい目に見下されるのは、とても興奮できるからね」
「放せ、やめろっ! うぅっ……んっ、んぁっ!」
 
雪間の抵抗は時がたつほどに弱くなっていく。このままではきっと久長のされるがまま、まさに玩具にされてしまうだろう。それは雪間自身嫌というほど分かっていたことなのだが、こうなってしまえば今さらどうしようもないことだった。

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