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シリーズ
7
古座が雪間との会話を打ち切ってしまったため、沖影も仕方なく通話を切り、乱暴に古座を仰向けにさせた。

「いって、なんだよ! 俺は怪我人だぞ!」
「どうして僕の言う通りにしなかった? 悪い子は言うこと聞けるようになるまでお仕置きだよ」
 
沖影の様子は明らかに今までと違っていた。どうやら古座が言うことを聞かず、雪間に先に帰るよう言ってしまったことが、よほど気に食わないようだった。 

「うあっ、やだっ、またかよ! もういい加減終われよ!」
 
正常位で激しく犯される古座は、情けない顔を晒しながら頭を振る。しかし沖影はそれを押さえつけ、古座の体に抱き着きながら唇を重ね合わせた。

半開きになった口の中に入り込む沖影の舌は、どんなに古座が拒否しようと強引にその舌を絡めとって、休む間も与えず蠢かせてくる。まるで命令に反したことを言った古座の舌へ、罰を与えているようだった。




自宅で古座の帰りを待つ雪間は、玄関の扉が開く音を聞いて反射的に身構えた。

薄暗い玄関に目を凝らせば、ややうつむき気味の人影が見えてくる。中へと入ってくるその人影は、やはり古座だった。

「遅かったな。というかこんなに遅くなるんなら、そっちから連絡くらい入れろ」
 
雪間は不機嫌そうに古座を責める。時間はもう夜の七時近くだ。外はすっかり日が暮れて、夜へと様変わりしていた。

「こんな時間までどこにいたんだ?」
「……し、診療所。色々あったんだ」
「一体何時間いたんだよ。それにその傷、今度は抜糸しに行かないと駄目なんじゃないのか?」
 
雪間はそう言って包帯で巻かれた古座の腕を手に取った。しかしその瞬間古座は雪間に詰め寄ったかと思うと、必死の形相で訴え始めた。

「やだやだ、ホントに絶対やだ! もうあそこ二度と行きたくない!」
「な、なんだよ急に」
 
突然子供のような駄々をこね始めた古座をなだめ、雪間はどうしたのかと詳しい話を聞こうとした。しかし古座は肝心の理由は絶対にしゃべらず、ただ「診療所には行きたくない」といった意の言葉をしきりにわめくばかりだった。

「その年で病院嫌いかよ、笑えない」
「病院じゃなくて医者が嫌なの!」
「どっちだって一緒だろ」
「それが全然違うんだよ! もういい、今日死ぬほど疲れたから寝る」
 
そう言って古座は話を一方的に打ち切って、ソファーに横になると早々に寝息を立て始めた。その横になってから寝つくまでの速さに雪間は驚く。それほど疲れるようなことなど、一体何があったのだろうか。

しかし直接聞こうにも本人は夢の中。雪間は不思議そうに寝息を立てる古座の寝顔を見つめることしかできなかった。

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