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走って

「…何にせよ、今日は私の家に泊まりなさい。院長には私から言おう」

松永は近づき、ゆっくりと抱き上げた。

「血が出ているではないか…まったく、卿は無理をする…」

足をバタバタさせ抵抗した小太郎が膝を曲げたところで、足を捕まえ足の裏を見た。

真っ黒になった靴下の裏が1ヶ所だけ湿っていた。

「…帰りに、消毒液を買わないといけないな」

松永の指が傷に触れ、小太郎は怖くなった。

一層強くなった抵抗に、小太郎を落としそうになりながら後部座席に乗せた。

「安心しなさい。私には卿を苛める気はないよ」

シートベルトをしめさせ、松永は運転席に乗り込んだ。

「…………」

バッグミラー越しに、たまに小太郎を見る。

ちんまりと座席に座り、俯いていた。

「………ん?」

施設の前から、ちょうど救急車が走り去っていった。

赤い光を見送り、施設の前に車を停めた。

「卿の仕業か?…」

理由もなく暴力を奮う子には見えないが、何も反応を示さないことを考えると、小太郎が何かやったのだろう。

松永はため息を吐いて車を降りた。

「…………」

施設の職員と、何か話している。

小太郎はチラリとそれを確認すると、シートベルトを外した。

松永は冷静そうだが、施設の職員はあからさまに怒っている。

(こわい…)

あまり音がたたないようゆっくりドアを開けると、小太郎は車を降りた。

「コタロウかの?」

院長の声だ。

…見つかってしまった。

小太郎はその場に立ち尽くし、動けなくなってしまった。

「心配しておったのじゃよ。どうしたんじゃ?」

小太郎の顔を覗き、院長は驚いた顔をした。

「…腫れておる…誰にぶたれたんじゃ?」

心配そうな顔をされ、小太郎は戸惑った。

怒られるとばかり思っていたのに、心配された。

こういう時は、どう反応すればいいのだろうか。

黙り込む小太郎の頭を撫でようと、院長が手を伸ばした時、「少し話を」と松永が後ろから声をかけた。

院長は手を引き、松永の方を向いた。

「分かっておる…コタロウは悪くないじゃろう…」

「ほう。それは私も同意見だが、卿の施設の人間は、そうは思っていないようだが?」

チラリとそれを確認し、院長はため息を吐いた。

「悲しいことじゃが、そのようじゃ…」

小太郎の頭を撫で、院長は悲しそうな目をした。

「コタロウが、理由無く人を傷つけるような子に見えるのかね…」



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あきゅろす。
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