終焉にはせめて、 元就死ネタ。 「…り、毛利!!!!!」 消えかけていた意識が、僅かに浮上する。 それは聞き覚えのある声だった。 荒波の轟きに負けないような、それでいて包み込むように優しい声。 「ちょう…そかべ、か」 地面に伏していた身体を少し動かし、 もうほとんど開かない目を動かして見上げれば、驚いたような悲しそうな、なんとも複雑な表情を浮かべた隻眼の姿があった。 「なんで…こんな、ことに」 奴は眉根を寄せて、周りを見渡す。 あたりは血の海と呼ぶに等しいような残骸の山だった。 「ふ…急な奇襲にも応対できなんだ…我が策も…墜ちたものよ、」 自分を嘲るように、だが力なく笑う。 豊臣を制圧したものの深手を負い、形勢が不安定な状態だったところの織田の急襲。 兵力の差は圧倒的で、ついに耐え切れなかった毛利軍は大敗を帰した。 「長曾我部…そなた何故このような場所へ来た。安芸をも制圧したとなれば、次には四国が狙われる事など予想がつくであろう」 「…」 奴は黙って、すぐ側に腰を降ろした。 顔を背けるように下を向くと、いきなり拳を地面に叩き付けた。 「……ごめん…」 「…長曾我部?」 握り締めた拳に力が入っているのが分かった。 何を言われているのか理解できず、何がだ、と問うてみる。 「俺は…」 表情は見えないが、 首筋に涙が伝ったのを見た。 「俺はお前を…守りたかった。なのに―何も出来ない」 「―守る?…何を吐かしておるのだ。この時世に、仮にも敵国の将を…守ると?」 そのような、生温い考え。 だからお前は馬鹿げていると言うのだ。 「毛利…元就、俺は、お前を…「長曾我部」」 「…?」 「… 言うな」 もう感覚の無い腕をずり、と引摺り 握った拳に重ねる。 「別れが惜しくなっては、仏の元へも行けぬ」 「…」 奴は少しの間押し黙ると、意を決したようで顔を上げた。 「ああ…そうだな」 ―待っててくれよ。 次は必ず守るから。 重ねた手のひらに何故だか安心して、 ゆっくりと目を閉じた。 戦乱の世に散り逝く桜 安芸が智将が最後に見たは 愛し 紫青の 鬼の笑み . |