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土方
あなたにとって。


「土方さんは、いつからマヨネーズが好きなんですか?」


「さぁな。」


「いつから煙草吸ってるんですか?」


「さぁな。」


「じゃあ私のことはいつから好きなんですか?」




「……そんな記憶はない。」




***あなたにとって。****



「騙されないか…っ。ちっ(舌打ち)。」


私の作戦だと、

『いつから私のこと好きなんですか?』

て言ったら、さっきの流れでつられてつい

『さぁな』

って言っちゃって


『えっ、それって今私のこと好きってことですか!?ですよね!?』

『くっ…やられた…しかし言ってしまったなら仕方ねぇな…男に二言はねぇ!!』

『でも、今のつられただけでしょ…?私のことホントに好きじゃないんでしょ……?』

『実は…恥ずかしくてずっと言えなかったんだ…でもお前がきっかけを作ってくれたんだな…(はにかんだ笑顔)』

『土方さん………』

『なまえ……………』



ってなるは…「「「さっさと茶ぁ持って来い!!!(怒)」」」



私の密かな趣味の妄想は土方さんの怒声によって遮られた。



「なんですかァー、土方さんーうるさいですよう」



土方さんは集中していたデスクワークを邪魔され、かなり機嫌悪そうだった。

「…うるさいのはてめぇだろ、お前はここに何しに来てんだ?あ?」

「…………土方さんに会いに?」

照れたようにモジモシとしてみせる。


「殴るぞ」


乙女になんて暴言を。

土方さんは胡座の足を組み替えながら入り口にいる私の方を向いた。

「なんだてめぇは…何しに来た」

「やだ、毎日来てるじゃないですか。忘れちゃったんですか?
真選組屯所雑用係、ていうか土方さんの自室にお茶を持って行く係、ていうか土方さんのお世話したい係、の苗字なまえさんですよう」

「最後の願望じゃねぇか」


土方さんにお茶を持って行く係なのは本当。
女中の中で希望者は多数だったが、根性の後出しじゃんけんで勝ち上がった。

そして私は必ず毎回お茶を忘れて来る。
もちろんわざと。

だって何回でも会いたいから。

「また茶ぁ持ってねぇんだろ。来る意味ねぇじゃねぇか。さっさと煎れてこい」

冷たい…………。意味はあるんですよう。
あなたの周りにいる大勢の女の人の中から特別になるには。
そのためにただの女中の私が出来ることなんて、
少しでも長く一緒にいて私を見てもらうしかないじゃないですか。

だいたい私の名前とか覚えてんのかなぁ?毎回自己紹介してるのに、「なんだてめぇは」だって。

いつもはここで折れて、大人しくお茶を持ってくる。その後忘れ物しました〜とか言って居座ろうとして追い出されて終わり。


でも今日は少し違った。



「お茶は…ないんです」

「はぁ?」


「私、あと20分、いえ少なくとも15分ここにいないとお茶、出せないんです」



明らかに嘘だ。口から出任せだ。
私だって引き際を知っている。少々ウザいと思われても本気で嫌われたらおしまいだ。
でも、今日の私は何か口走っている。



「なんだよソレ」


土方さんの顔が少し険しくなった気がした。


「あのあの、お告げが…いや宇宙からの…いやとにかくっ!!そういうことになってるんですっ!」

私の声は土方さんの部屋に響いた。部屋が静かな分余計に目立った。

私、息切れしてる。必死すぎ……?


「……」


土方さんは黙っている。きっと何も言えないんだ、呆れて。

完全におかしいと思われたなこりぁ。まぁ今に始まったことじゃないけどね。



「勝手にしろよ」


土方さんの口から出てきた言葉は意外なものだった。てっきり追い出されるかと思ったのに。


「いーんですか」

驚いた顔をした私を、逆に土方さんは不思議に思っているみたいだ。

「お前が言い出したんだろ」


きっとコレは賭なんだ。


「…じゃあ15分ここにいます」


「ああ」


もしこの間に


「私しゃべっててもいいですか?」


「勝手にしろって」


もし、土方さんが私のこと少しでも特別に思ってくれたなら


「私うるさいですよ。また妄想とか展開しちゃいますよ?仕事の邪魔するかもしれませんよ…」



もし思ってくれたなら




「しつけぇよ。俺もずっと仕事ばっかしてるのも疲れたんだ。……なまえといると退屈しなくていいからな。」





  "なまえ"



私は聞き逃しませんでした。

今度はお茶を忘れずに持って行きます。
土方さんの分と、それから私のも。

そしてまた改めて自己紹介してあげますよ。


そして、改めて
"好きです"
って言ってあげます。




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