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魔女の初恋 [タケマイ←魔女]



タケルは私の我が儘を聞いてくれる。
毎日、来てと言ったらタケルは毎日来てくれている。
自分でも分からないけど毎日顔を合わせたいと思ったから。

だけどタケルは私の物じゃない。

優しいタケルを皆が狙っていて、近寄る女は沢山いる。
牧場の娘、仕立て屋の娘も、そして何より宿屋の娘。
魔法使いも使って自分で調査して調べた結果がこれだ。
女がタケルに近付く。
その度に苛々して、でも気になって。
それを魔法使いに話したら、

「君も、タケルが好き……なんだね」

そう言われた。
初めは認めたくなくて気付かない振りをしていたけど、タケルに会う度に気持ちに嘘がつけなくなっていた。いつしか

誰にも取られたくない。

そう思うようになった。
私は我が儘でタケルはそれを聞いてくれる。
私がタケルを欲しいと言えば彼は自分の身を私に捧げてくれるだろうか?





今日も暇そうな魔法使いに話を聞いてもらいに行く。
結局、この話を聞いてもらえるような人は魔法使いだけ。

「そろそろ月見祭だし、タケルを誘おうと思うんだけど」
「いいんじゃない……頑張って」
「何よ、どうしたの急に」
「別に。紅茶、飲みなよ」

きっと、魔法使いは知っている。
タケルが誰と月見祭に行くのか、私の恋はどうなるかを。
聞けば教えてくれるだろう、それでも聞けないのは自分の中で大体の予想がついているから。

「タケルは宿屋の……」

そこまで言って続きは飲み込んだ。
言葉にするのさえ怖かった。
魔法使いも何も発することはなく、ただそっとタムタムダケを差し出してくれた。

「何よこれ」
「ヒカリがくれた。譲るよ」
「いいわよ! 私だってタケルから貰ってるわよ!」





真夜中。
家の扉を叩く音がする。それが誰かなんて分かっている。
扉を開けるとそこに立っていたのはやはりタケルだった。
家の中に入れて早速、気になっている事を聞きだす。

「タケルは月見祭誰かと行くの?」
「え、んーまぁ行けたらいいよね」

笑って言うタケルに近寄り、顔を近づけた。
頬を赤らめて混乱しているタケルを気にせず私は話を進めた。

「ま、魔女さま!?」
「あたしと行きなさいよ」

私の言葉にタケルの動きは止まり、顔も真剣な顔つきへと変わった。
その顔が好きだ、なんて言わないけど。

「ごめん」

発せられた一言に私は乗り出していた身を引っ込める。

「……今欲しいものがあるの」
「何?」

ほら、私の我が儘を優しい顔で聞いてくれようとする。

「あんたが欲しいって言ったらどうする?」

もう無理な事は分かっているが簡単に諦めきれなかった。最後の悪あがきだと思う。

「それは……できないよ」

タケルが呟く。
初めて、私の我が儘を拒んだ。

(あーあ)

「……んなの、知ってたわよ!」
「え?」
「あんたに好きな子がいることくらい分かってたわよ! ちょっと後押ししてあげようと思っただけ!」
「魔女さま、ありがとう」

私が顔を上げると目の前には微笑んでいるタケルが居た。
あんたのその優しいとこも好き
泣きたい。泣かない。泣きたい。
頬杖をついて何ともないって顔をして、私は口を開いた。

「逃しちゃ駄目よ。待つだけじゃ駄目だし、男なら自分から勝負しなさい」
「うん」
「私はタケルを応援してる」
「うん、ありがとう、魔女さま」





頭上に広がる星空を見つめる。横には望遠鏡を覗いている魔法使い。

「あんた、最初から分かってたでしょ」
「……何を」
「とぼけないでよ」
「君に……頑張ってほしかった。君が本気だったから」

そう言って魔法使いは再度望遠鏡を覗いた。
大きな溜め息をつく。

「……あんた、の紅茶が飲みたい。でもってあんたは好きな子と幸せになりなさいよ」

私の言葉に魔法使いは一瞬目を見開き、すぐに笑みを浮かべた。

「うん。紅茶、美味しいの、淹れるよ」




魔女の初恋


(あなたが大好きでした)
(いつの日か幸せそうな二人を祝えるように)




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タケマイ←魔女+(他数名)
今回は魔女視点でしたが
他の女の方達も同時に失恋(汗)
その後魔女さまはユウキに恋します←
てか魔女さまって一人称何でしょう←


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あきゅろす。
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