未完成恋心/後編 [ユウキャシ +チハヤ] 「お待たせ」 美味しそうな料理が目の前に湯気をたてて置かれた。 「おぉうまそ! さすがチハヤだな。相変わらずうめぇ」 一口、口に運んで感想を述べればチハヤはいつも嬉しそうな顔をする。 (何だかんだいって褒められんの嬉しいんだな) 俺はそんなチハヤを見てからかうように言った。 「チハヤは俺に会うのが楽しみで俺が食べてるの見るの好きだもんな」 「変な自惚れはやめてくれるかな」 嘲笑いをしてチハヤが言うが、 「またまたー、照れちゃって。チハヤは本当に俺が好きだな」 「……阿呆じゃないの」 「くそぅかわいいなー!」 「ねぇもう一個料理奢ってあげるからその中に毒いれていい?」 「遠慮しときます」 ふいにカランカランと音が鳴り、店の扉を見ればキャシーが外に出て行った。 顔の向きをチハヤの方に戻せば、チハヤは思い出したかのように呟く。 「そういえばさ」 チハヤが今から何を話そうとしているかなんて分かってた。 「全部聞いてた?」 頬杖をついて微笑しながらチハヤに問いかける。 チハヤは悪いと思って目線を逸らす……こともなく平然としていて、 「何だ。分かってるなら話が早いや」 (まぁそういう奴だと思ってたけどさ) 「何の為にあまり人が来ないこの時間にわざわざ足を運ぶのか……言えば済む話じゃん」 「んなの言える訳ねぇよ」 「キャシーと話したいからでしょ」 直球で言うチハヤに俺は自分の行動に今更恥ずかしくなる。 恥ずかしさを紛らわせる為にチハヤの料理を口に運ぶが、ふと食べる手を止め、先程のキャシーの言葉を思い出す。 「ていうか俺はどんだけタラシだと思われてんだ」 チハヤは俺の言葉にため息を漏らすと呆れた顔で話し出した。 「まぁユウキは誰にでも優しいけど、中でも女に優しすぎるからいけない。でも、」 付け足すようにチハヤは言葉を繋げる。 「聞いた所、女の子のデートの誘いや告白とかは断ってるらしいね。マイに口止めさせたし、この話キャシーの耳にはまだ渡ってないと思うけど」 「当たり前じゃん。俺には好きな奴がいるんだ。でも何か困ってる人を見ると助けたくなるというか」 「そこがユウキらしいけどね。でも女、何人か泣かせてるんでしょ? 可哀相」 「お前だけには言われたくないな」 そう言えばチハヤは、さぁねと一言言って綺麗になった皿を持って台所に戻った。 入り口を見れば、キャシーがハーバーさんと店の中に入ってきた。 例の三人は酔ったのか激しく煩く、キャシーとハーバーさんを呼んで仲間に入れようとしている。 キャシーは苦笑いをしながら注文をとったり話相手になっていて、ハーバーさんは困っている。 その光景に俺が小さく笑うとコトンと目の前に飲み物が置かれた。 「これ特別にね。てかユウキっていつも『あの子は絶対俺の事好きなのに』とか馬鹿な事言ってるのにさ……」 チハヤが俺の真似(棒読み)をして言う。確かにそうだ。 変なナルシストだったな。 「でも好きな子に対してはネガティブだね。見てるこっちが溜め息つきたくなるよ」 「は?」 「チハヤ、注文!」 キャシーがおじさん達(失礼か)席周辺からチハヤを呼ぶなりメニューを言う。 チハヤはまた調理にかかりだした。 チハヤは何を言いたいのか、 そんな事を考えながらチハヤが特別にくれたオレンジジュースを口に運んだ。 気付きなよ、 両想いだってことに (見てるこっちが焦れったいんだよ) -------------------------* ※このお話は「未完成恋心/前編」と繋がってます。 ユウキ視点です*´` 実はユウキはキャシーが好きで キャシーもユウキが好きな事に チハヤは気付いてた!みたいな(笑) 裏設定でユウキとチハヤは仲良し。というかユウキがオレンジを貢ぎまくって← _ [*前へ][次へ#] [戻る] |