彼氏彼女の特権 [いずちよ]
「彼氏とかいらないって思ってたけど、やっぱ居るといいよね」
俺の彼女であり、西浦高校野球部のマネージャーである篠岡千代は、ブランコを漕ぎながら突然呟いた。
今は部活が終わった帰り道で、公園に寄っている。
一緒に帰れる道は駅までという短い距離だが、今日のように、より道をしたりする。
少しでも君と一緒にいたいからだ。(口にはしないけど)
二人が付き合っている事を部活の皆は知っている為、堂々と二人で帰ることが出来る。
何故公認になったかというと、俺がわざと見せつけるような事をしたから。
「何それ」
俺が眉をしかめて言うと、篠岡は俺に微笑んでまたブランコを漕ぎ出す。
「嬉しかったなぁ。泉君の告白。私が彼氏でき」
「言わなくて良いから」
「いいじゃない、言ったって」
そう言うと篠岡は頬を膨らませて、ブランコの動きを止める。
「でも泉君と付き合ってなかったら、恋人繋ぎ出来なかったもんね」
微笑む彼女の顔は赤くなっていて、俺がじっと篠岡を見れば、「や、あの、瞑想で手つなぐ時とかとは何か違くない?」なんて、眉を八の字にして両手を左右に振りながら言っている。
「変なこと言ってごめんなさい」
しゅんと肩を竦めた篠岡。
(ほんと可愛いや)
俺は立ち乗りしていたブランコから飛んで地面に着地すると、振り返り、篠岡へと歩み寄る。
ブランコの鎖を乱暴に握れば、ガシャと音が鳴る。
篠岡の目の前に立って篠岡が逃げ出せないようにした。
ブランコに座っていた篠岡は更に困った顔をして、下から俺を見上げている。(いわゆる上目遣い)
「あの、い、泉君?」
(篠岡焦ってる。目が泳いでやんの)
心の中で笑えば、少し屈んで篠岡と顔の位置を合わせる。
目の前にいる彼女は顔が真っ赤で、俺は口角をあげる。
「顔……近くない?」
「俺、篠岡と手繋ぐのも好きだけど。やっぱ付き合う事で出来るようになって良かったのはさ」
そう言って篠岡の唇に俺の唇を合わせる。
唇を離せば、篠岡は相変わらず真っ赤で、俺はニコッと笑う。
「こうやって篠岡とキス出来ることかな」
篠岡から離れようとすると、服を掴まれた。
「こーすけ」
ふいに呼ばれた下の名前。俺の動きは止まって暫し見つめ合い。
篠岡は俺から地面へ顔を向けると、小さな声で呟いた。
「私も、だよ」
彼氏彼女の特権
(千代、好きだよ)
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初の甘……甘々(か?)書きました。
いずちよも好きなんです
これが田島君や水谷君、
栄口君だと、また違った感じに
なったのかな(´`*)?
と思いました!
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