儚き想いは胸の中に [田篠←水 +泉] 「行きなよ、篠岡のとこに。篠岡が待ってるのは俺じゃない」 「水谷」 「早く行けってば!」 俺の横を通りすぎる際に田島は「ごめん、ありがとう」そう呟いた。 部室の扉が音をたてて閉まる。人が居なくなった部屋で、大きな溜息を一つ漏らした。 * 篠岡がマネジの仕事中に倒れた。 俺達はすぐに篠岡に駆け寄った。シガポも浜田も今日は居なくて、傍に居たからかモモカンに 『水谷君、千代ちゃんを保健室に連れていって!』 と頼まれた。 軽い篠岡を背中におぶって駆け足で保健室へ向かった。 篠岡をベッドに横にさせる。 息が荒く、額にそっと手を当てればかなり熱かった。 ぎゅっ、と篠岡の小さな手が額にあてていた俺の手を握ってきた。突然の事に俺の顔は一気に熱くなって「篠岡?」と、呟けば返ってきた返事は、 「田島……く、ん」 * そして冒頭に戻る。 呆然とその場に立ち尽くしていれば、この部屋の扉が開く。 「部室で何してんの? お前、篠岡のとこに行ったんじゃねぇの?」 聞き覚えのある声に俺はゆっくり声の主の方へ顔を向けた。 「グラウンドに帰ってくるなり田島連れてどっか行くし。しかも今、田島がもうダッシュで通り過ぎてったけど」 「泉、何で此処に?」 「……忘れ物取りに来たんだよ」 忘れ物を取りにきたはずの泉だか、動く気配がない。 俺はとっさに片手で目をこすり、いつものように笑って言う。 「早く帰んないとモモカンにおこら」 ふいに視界が暗くなる。 「辛かったな、水谷」 視界を暗くしていたのは泉の帽子。俺は鍔を少し上げ、泉を見る。 泉がいつになく優しい顔をしていて、俺の目から涙が静かに頬を伝った。 儚き想いは胸の中に (今度ケーキ食うのつきあってやっから。ほら、いくぞ) (そこは奢ってやるからじゃないの?) (今、金欠なんだよ) ----------------------* 初.田篠←水 水谷君と友情出演の泉君。 この話の裏で 田島君と千代ちゃんは両想い(^^)← . [*前へ][次へ#] [戻る] |