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独占 [たじちよ]



今日はテストが近いということで、野球部全員が三橋君宅に集合。
まさかの、マネジの私も参加。
そして三橋君と田島君には専属で勉強を教えることになり、
三橋君には阿部君。田島君には、私。

「えっ、とね、その、ここ、は」

多分顔が真っ赤なんじゃないか、って思う。
田島君がすごく近くにいて、それで……

「しのーか? どうかした?」
「くく、三橋みてぇ」
「え、あ、お、おれ!?」

あ、阿部君笑ってないでよ!
もとはと言えば、阿部君の、

「田島には篠岡が適任かと。俺三橋見るし。篠岡頭いいしな」

この一言が原因じゃない!
あの時の楽しそうな顔で私を見て言った阿部君は悪魔だ。
私、田島君が好きなんて阿部君に一言も言ってないのに……!
さすが捕手と言うべきか。
結局、阿部君の言葉にみんな納得して
(阿部君の意見だし)
田島君なんて「しのーか、よろしくな!」って笑顔で言うもんだから、「あ、うん、こちらこそ」って言っちゃったし。

そして今に至る。
もう心臓が破裂しそう。
――あれ?

「阿部君、みんなは?」

先程までいた他の野球部部員がいつの間にか居ない。

「さっき、コンビニに行くって出て行った。三橋と田島は馬鹿すぎるから駄目って止めた。てか、篠岡も水谷の誘い断ってただろ」

(そんなの覚えてないもん! だって私、田島君にドキドキするのに忙しくて)

ふと、阿部君が教科書を閉じた。

「三橋。気分転換にお前ん家の庭にある、あれ、やってこようぜ」
「俺もいきたい!」
「お前は駄目。篠岡、田島頼むな」

阿部君はそう言い残して、三橋君を連れてこの部屋を後にした


え? ちょっと待ってよ!


二人っきりになった部屋は静かで、暫しの沈黙が流れる。
何でこういう時に限ってみんな居ないのよ!
阿部君だって絶対わざとだ!

「あのさ、しのーか」

田島君が呟いて私は咄嗟に俯いていた顔をあげる。

「なぁに?」
「……俺につきっきりで勉強教えるの嫌だった?」

目線を下げながら田島君は私に問いかけた。

――そんなはずがないよ。

「た、じま君が」
「うん」
「……田島君が傍にいてドキドキしてて、そ」

言葉の続きを言えなかった。
何が起きたのか、
状況を理解するのにそんなに時間はかからなかった。
田島君の黒い髪が私の頬に少し触れる。少しくすぐったい。


田島君が私を抱きしめてる。


ああ、私の顔最高に赤いかも。頬に熱が集まってきてる感覚。……ゲンミツに赤いや。

「俺、今、馬鹿で良かったって思った」

ゲンミツに!
と田島君は付け足すように言って、再度話し出した。

「だって、馬鹿だから、しのーかのこと独占できるし! しのーかが他の奴らに教えてるなんて嫌だし!」

田島君の背中に手を伸ばした。
田島君がどんな顔しているかなんて分からない。
でも、もう止まらない。
阿部君、みんな、今更だけどありがとう。

「私も田島君独占できて、嬉しいよ」

そう言ったら、彼にぎゅっと更に強く抱きしめられた。




独占
 
(あれ? 三橋と阿部何で外にいんの? じゃ篠岡、えっえっ)
(クソレうるさいぞー)
(空気読め、水谷)




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たじちよ可愛いです
これ、阿部が千代ちゃんに
馴れてきた頃設定で←

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