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グリコのおまけ [いずちよ]



私には泉 孝介くんという付き合って五ヶ月になる彼氏がいます。
泉君といると楽しくて、手を繋ぐだけでも幸せです。
けれども私には悩みがあります。

それは単純な悩み――彼が未だに私を名前で呼んでくれない事。

距離を感じるとか、そんなことではなくて(私も泉君って呼んでるし)ただ、泉君に私の名前を呼んでほしいのです。
一度だけ頼んでみましたが、軽く流されたのでそれ以降その事を口にはしなかった。

「"篠岡"、帰ろうぜ」

だから私は考えました。
そうしたら、彼が自然な口調で私の名前を呼んでくれる方法を見つけたので、今日早速試そうと思います。


***


「泉君、グリコしよう」

帰り道、人通りが少ない道に入るなり私は彼に握りしめた掌をつきだした。
あまりにも突如かつ幼稚な遊びの提案に泉君は眉間にしわを寄せている。

「なんで」
「少しでいいからやろう」

泉君に笑って見せれば、恥ずかしそうに握り拳をこちらに差し出してきた。
何だかんだいって優しい泉君に頭を軽く下げて早速「じゃんけんぽん」と言うと、私がパーを出して泉君はグーを出していた。

(あ、勝っちゃった)

勝つつもりはなかった。だって泉君にはチョキで勝ってほしかったから。
ばれないように、一応パーの分だけ足を進めて再度じゃんけんをする。
もう一度だけ、パーを出してみた。そうしたら、彼の指はチョキの形を型どっており私は心の中でガッツポーズ。

「"チヨ"コレイト」

(あ、やばい)

心臓が大きく高鳴って口元に両手を添えた。
隣へとやってきた泉君が心配そうに此方を見ていたので、私は慌てて三回目のじゃんけを促す。
ばれないように、パー以外を出したつもりがまたも掌は開いたままだしてしまった。
彼はまたチョキで私を追い越した。それでも最初の二文字は私の耳にしっかりと聞こえて胸の鼓動は早くなる。

「篠岡」

前方にいる泉君が振り返って私を呼んだので、にやける顔を少し引き締めて何事もないように振る舞って答える。

「なぁに?」
「さっきからパーしか出さないじゃん」

その言葉に今度は違う意味で心臓が高鳴る。

「……そうかな。私、パーがでやす」
「千代」

私の名前を呼んだのは目の前で平然とした顔をしている泉君で、夢の中かと思い頬をつねってみるが痛かった。

「ばーか、現実だって」

口元に手を添えて泉君が笑う。
遊びで言ったチヨじゃなくて、ちゃんと私の名前を言ってくれた。
ずっと望んでいた事が叶ったのが嬉しくて、思わず涙が出そうになり目元を拭う。
不意に包まれたのは泉君の腕の中。
泉君を見上げてみればとても優しい顔で笑っていた。

「わざとパーばっか出してただろ。俺がチョキで勝って"チヨ"って言うように」
「……何で分かったの?」
「千代は分かりやすいんだよ」

(あ、また名前呼んでくれた)

頬が熱くなってきたが、嬉しくて私は泉君に微笑む。照れた顔をした泉君が私の頭に手を添えて口を開いた。

「前はまだ付き合ったばかりで何か恥ずかしくて呼べなかった。ごめんな」
「ううん! 孝介大好き!」

私も泉君を名前で呼べば、泉君の顔は赤くなって最後は笑顔になる。

「俺も千代が大好きだよ」

ああ、幸せ!




グリコのおまけ




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お久しぶり更新です(^^)!
懐かしのグリコ(^O^)!
本当はみずちよverも書こうと思った←

新年初小説!!
あけましておめでとうございます!!

2012.1.3

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