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小説(短編)
想いの届く時(絳攸×楸瑛)
この想い…気付いたのはいつだっただろう?
初めはただの同僚で…そう、庇われて、相手が傷付いて、自分の矜持が傷付いた。護られるのでなく、護りたくて…
その力がない事が辛かった。

そう、きっとあの時から…自分は不毛な恋をしている。


「ふざけるなっこの常春がぁ」
彩雲国。王の執務室。今日も李絳攸の罵声が響く。
怒鳴る相手はいつもと少し違う。相手の反応もまた…。
「そう言われてもねぇ」
飄々と答える常春―藍楸瑛を絳攸は更に怒鳴りつけた。
「何の為の見張りなんだっ」
彼が怒っている原因はこの室の主、紫劉輝の仕事が一向に減らない事に対してだ。まあ、これでも随分片づいたのだが…。
「こ…絳攸」
「無駄口たたかないっ」
劉輝の言葉を容赦なく切り捨てて絳攸は同僚を睨む。
「………はぁ、わかったよ。私も手伝う。それでいい?」
「当然だ」
自信満々に頷いた絳攸に楸瑛は溜息を漏らした。





「お、終わった…」
疲れた声で言った主に楸瑛は笑った。
「お疲れ様でした」
隣では絳攸が当たり前だというような顔をしていた。
「はあぁ」
本当に疲れ切った劉輝に楸瑛はふと思い付いた。
「これから、羽林軍で飲み会があるんですが…来ますか?」
「いいのかっ」
「無礼講ですし。絳攸、君も来る?」
「なんで俺が」
「いいではないか」
そういう劉輝の顔が余りに輝いていたので結局、絳攸は断れなかった。




(…来るんじゃなかった…)
無礼講と評して行われている酒宴。
絳攸は現状にイライラを募らせていた。
原因は楸瑛………………ではなく、彼に群がる武官達である。
(なんだって)
いくら無礼講と言っても触り過ぎじゃなかろうか?しかも、本人がさほど抵抗、反応していないのでいつもの事とわかり、よりイライラする。
羽林軍には楸瑛を慕うものが多い。お前らはボウフラかっと突っ込みたくなる程いくらでも涌いてくる。
絳攸が知っている例外など、隅の方でお茶を飲んでいる皐韓升ぐらいである。(大将軍は論外)
絳攸の苛立ちが頂点に達しようとした時…。
「楸瑛〜」
間延びした声が響いた。
「主上?」
劉輝は随分眠そうな目で楸瑛を見上げた。
この所忙しく、疲れていたのだろう。
「戻りますか?」
優しく問うて楸瑛は立ち上がった。
「じゃあ、この辺りで私達は帰るよ」
武官達が不満そうな顔をしたが、王には逆らえない。
「絳攸、行こう」
誘われる自分に優越感を覚えつつ絳攸は楸瑛を追った。





「ごめんね、絳攸
唐突な一言だった
主上を送り届けて、藍貴陽邸にて、茶器を用意しながらの楸瑛の言葉。
「何がだ」
「息抜きにと思ったんだけど…逆に不愉快にさせたみたいだからね」
楸瑛の一言に彼が自分を見ていてくれた事を知る。 嬉しかった。
「気にしてない」
「そう?ならいいんだけど」
そう言って笑った楸瑛の顔は綺麗で…。
気付けば楸瑛を臥台に押し付けていた。


絳攸は不愉快をそのまま酒を飲む事で誤魔化していた…。
普段の酒量より多い酒は内に秘めた想いを暴く。
驚いている楸瑛の唇に唇を重ねる。
「んっ…」
何故か抵抗しない楸瑛。
冗談だと思っているなら後悔する。
「ぁっ…んん」
深く、長い口付け。
「ちょ…絳攸っ私は女性じゃないよっ」
そんな事はわかっている。
手を下肢に伸ばした。
楸瑛の急所を握り込む。体が震えた。
「ぁっ」
ゆるゆると扱くと、楸瑛が微かに声を洩らした。 「こっ…ゆうっ」
キツイ口調。けれど抵抗しない。
「まってっ…お願いだからっ」
荒い息をつく楸瑛に絳攸は動きをとめた。
「…えっと…私は男だよ」
「見りゃわかる」
「君、私の事嫌いじゃないの?」
「そんな事言ってない」
「…私の事そういう意味で…好き?」
「じゃなきゃ、襲うか」
「………だよね」
楸瑛は息をはいた。
「最後にもう一つ……私が…下?」
「抱きたいからな」
いつもの絳攸らしくない態度に楸瑛は額を押さえた。相当酔っている。
じゃなきゃこんなにはっきり自分への欲望を言う筈ない。
そう、楸瑛は知っていた。
絳攸の自分に対する好意を…。
しかし、その意味までは知らなかった。
まさか、情欲だったとは…。
「まあ、絳攸だしね。上でも下でもどっちでもいいよ」
「楸瑛?」
「生憎とこんな相手の意志を無視するような事をされても、許してしまえるくらいには君の事が好きだしね」
「楸瑛…」
「君は…絳攸」
「っ…好きだ」
微笑む楸瑛を絳攸は抱き締めた。




「そういえば、君はいつから私の事を好きだったの?」
情事後のけだるい口調で楸瑛が尋ねた。
「絳攸?」
言える訳ない。
いつの間にかなんて絶対に。
そっぽを向く絳攸の態度にクスクスと楸瑛は笑う。 「黙ってろっ」
絳攸は楸瑛の腰を引き寄せて唇を塞ぐ。
思いの外感度のいい楸瑛の腔内を蹂躙しながら、絳攸はこの今日からの恋人を黙らす手段を考えていた。


こんなんでどうでしょう。
真です。 うーん、当初の予定と違う気が…。
割愛したヤバいシーンがみたかったら教えてください。 感想を頂けると幸いです。
真 拝


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あきゅろす。
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