06
<1/4>ページ




シゾンタニアに夜が訪れた。


夜間勤務のチームを除き、他のナイレン隊の面々は休む時間帯だ。街の治安も安定し平穏を保って善いため、一日の疲れをとるべく各自自由に過ごしている。


―部屋で寛ぐ者


―夜の街に出る者


―娯楽を愉しむ者


―廊下で訪ね人に出くわし連行される者


それぞれ今日という一日を閉めるの為に、有意義に時間を味わっている。






06 --







「さぁ、なんなんなの」


自室にユーリを連れ込んだエーリルの第一声はそれだった。
掴んでいた腕を離し、正面から視線でユーリを捕らえる。


「なんの事ですかねぇ」


それに対して、素知らぬふりのユーリは明らかに馬鹿にした様に言い返す。眉毛が吊り上がったエーリルと目が合わないよう、逸らしながら。わざと。


「今日、あたしにぃ、何をそんなに、怒ってたのか、聞いてんの、よ」
「その説明解りやすいな」
「ほめる暇有るなら説明なさい」




立腹しているがあくまで冷静に――、エーリルは話す。

下町の自由な風に育てられた様なユーリと話し合うのに感情を爆発させては、言葉で弄ばれてしまって終了だ。そんな輩を今まで何度見てきたか。

しかも今のユーリは完全に口喧嘩の調子であった。その証拠にいつもより口が悪いし、何かと挑発気味だ。



「俺の方こそ納得させてもらいてぇ話しが、あるんだけどな」

「どうぞ」


(それが原因なんでしょ?)


昨夜からの鬱憤がやっと解放できる喜びに、ユーリはニヤリと口端を吊り上げた。見下ろす先には、軽装の団員服の襟を鎖骨まで下げて着崩してるエーリル。怒っていながら真面目な顔つきで自分を見つめている。
そんな彼女の驚く顔を目に浮かべながらユーリは口を開いた。




「フレンと連絡取ってたんだってな、エーリル。初耳だったぜ?俺」



自分がこの事実を知った事はエーリルは知りもしないはずだ。してやったりとユーリは更に口端を伸ばす。

だが、対する彼女は、吊り上げてる眉を眉間に寄せただけだった。




「は?……それで?」


完全に肩透かしを食らった味の台詞だった。だが、そんな事で言葉に詰まるやわな育ち方をしてる自分では無い。ずいっ――と、自信満々のままエーリルへ一歩距離を詰める。


「俺は知らねぇぜ」
「あんた、」



見下ろす双方の瞳が数回瞬きをして、その奥の茶色がいぶかしげに染まった。



「本気で言ってる?」
「俺が嘘ついてるってぇ、言いてぇなら――」
「そうじゃない」


エーリルはピシャリと言い放つ。

強めな否定に、酒場のチンピラに喧嘩を吹っかける時と同じ勢いのユーリだったが、押し黙る。





[次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!