05
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足元を仔犬が纏わり付きながら一緒に走っている。
走っている足に寄って来るので踏みそうでとても危なかっしいのだが、仔犬ラピードは素晴らしく賢いのか、はたまた果てしなく運が良いのか――、今のところ踏み付ける事も無くエーリルは正面玄関へと一緒に駆けていた。
05 -守る者として-
先程、昼食を途中まで共にした先輩方にとっさについた嘘だったが、成り行きで、食後を本当にラピードと時間を過ごす事になってしまていた。
目的地にたどり着いたエーリルは息を整える事を後にまわすと、一緒に走った相棒へと向き合った。
「到着〜〜、ラピード速いっ」
伝えれば相棒は“まだまだぁ!”と言う様にぴょんぴょん地面を走り回っている。
その仕草の愛らしさに鼻から息を吹き出し、浮かべた笑みはにんまり弧を画いた。
「さっすが仔犬」
元気がいっぱい。
その動きに応えてやるのに、エーリルは隠し持っていたボール取り出した。休む場所はないかと屋敷の裏手を散策していたら、落ちていたのだ。空から降ってきたのだろうか?
「ラピード?」
名を呼んで球を見せて、エーリルは数回、掌からボールを投げ上げた。
どうやら興味はひけたらしく、その動きをラピードは碧翠の瞳で追う。球が上がれば瞳も上に、球が手に戻れば瞳は中央にと、瞼をピクピク動かし追従してくる。
「いっくよ!」
上げていた球を最後一度見せ、エーリルはなるべく遠くへ転がるように投げた。
作戦は成功したようで、ラピードは放物線を見上げ追いかけていく。
疲れを知らない元気な姿にエーリルは大きな歓喜の包まれた。
「おぉ、はやっ」
遠くに投げた色取りどりの柄の球を捕まえるべく、小さな駆体の持ち主は素早く動きながら捕えるのに夢中だ。
観てて飽きない。
キィ――――
少し遠くから、扉が開く金属音が耳に届いた。
この玄関先に設けられた広場でその音を耳にするなら、屋敷に誂えてある扉のみ。
茶っ毛の髪を揺らし扉がある方角を向けば、凛々しい顔立ちでフレンが屋敷からこちら――広場へ歩いてきていた。
別の方角から獣の足音も聴こえてくる。
ちょうどいいタイミングにエーリルは声を腹から張り上げた。
「フレーン、見て見て」
口許に手をあてて出した声は届いて、フレンはこちらに意識を向けてくれる。
「ラッピ、もいっかい、いくよ!」
くわえて持ってきたボールをラピードから受け取って、エーリルは力いっぱい空へ投げ放った。
さすれば先程より速く、遠くへ、球は弧を画きながら飛んでいく。
そしてその後を小さな躯体が猛スピードで駆けていった。今日いちばんの速さだ。あれは。
駆けていく仔犬の姿を眺めながらフレンはエーリルの傍に辿り着いた。
ラピードと戯れるのがよほど愉しいのだろう。一瞬見た彼女の顔は上機嫌そのものだった。
「夢中だね」
「かなり全力だよ、あの子」
「そうだね。ラピード!」
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