あなただと気付けないわたしをどうか責めて
夢を見た。
わたしはいつものようにベッドで眠っていて、誰かが隣に座ってた。その人の顔は霧がかかったようにもやもやしていてよく見えない。しかし何故か表情だけは判別出来た。
とても優しそうに微笑んでいるその人は、そうっとわたしの頭を撫でる。それがとても心地よくてわたしは更に深い眠りに就いた。
そのまま少しして、その人はベッドから立ち上がる。わたしの額に、何か柔らかいものが押し付けられた。それでわたしは目を覚ますけれどそこには誰もいなかった。
そんな夢。
(…何だったんでしょう…)
どうしてかその夢が気になった。夢なのに夢じゃないような不思議な感覚がした。
(……あ…?)
その時微かに覚えのある匂いがした。知っているはずの匂い。
誰かがつけていた香水の香りだった気がする。だけど思い出そうとしても夢の中のあの人のように霞がかっていて答えを見つけることが出来ない。
そんなもやもやを抱えたままわたしはベッドから起き上がり身なりを整える。
程無く、一本の電話が入った。その電話は獄寺さんからだった。
嫌な予感がした。
「……十代目が――、」
気付いた頃にはもう遅かった。あの香り、あのキスの意味をもっと早くに気付いていれば貴方を止めることが出来たかもしれなかったのに。
ごめんなさい、ツナさん。大好きな貴方の香りに気付けなかった。
ごめんなさい、ツナさん。大好きな貴方からのキスを、「さよなら」のキスにしてしまって。
気付いた頃にはもう遅い。貴方はもう、戻って来ない。
fin.
――――――
あなただと気付けないわたしをどうか責めて。
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