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きまぐれな瞳



「青峰君、嫌です」
「いいから、俺の退屈しのぎに付き合えって」

青峰君はいつも僕が嫌と言っても聞いてくれない。
青峰君の退屈しのぎは僕にとって、少々キツいのだから。

「テツは俺だけ見てろ」
「あっ」

読んでいた本を奪われた。
せっかく読んでいたのに、どこまで頁を開いたのかわからなくなってしまった。

「文字ばかりで飽きね?」
「飽きません、本が好きですから」

‘本が好き’と言う言葉に反応してしまった青峰君に睨み付けられた。その噛み付かれそうな瞳に僕が映る。

「本じゃ…光にはなれねぇ」
「青峰君、本にムキになってませんか?」
「うっ」

動揺の色が見えた。
それが可笑しくて、僕は少し意地悪を言う。

「本に嫉妬だなんて、青峰君らしいですね」
「っせーよ。あー、退屈しのぎも止めだ」

本を枕代わりにして寝転ぶ青峰君。「返して下さい」と言っても返してくれない。

「あー、うー、ひまー…ねみぃー」
「眠いなら保健室でも行ったらいいじゃないですか」
「だなっ!行こうぜテツ!!」

力任せに抱っこ。
もがいても力には敵わない。
途中で他の生徒に見られたのは恥ずかしかった。「お姫様抱っこだ」と女の子の声が飛ぶ。
それでも良かった。

「青峰君…」
「周りなんて見んな。俺だけ見てろ。じゃねぇと落とす」
「はい」

僕の体は乱暴に揺れるけど、落とさない。
その何気ない優しさが僕は好き。

「青峰君、先生いませんね」

僕の話しも全く聞かずに、誰もいない保健室の扉を鍵ごと閉める。
目の前には太陽の光が反射するくらいの白いベット。

「保健室で2人きりか、なんかムラムラする…」
「もっ、青峰君っ」

この展開には毎度ながらついていけない。
力じゃ勝てない。僕の負け。
目を閉じて、白いシーツを握りしめた。


END


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