隼と不死鳥04










それが例えばしょっちゅうべたべたとくっついてくる恋人や、長い付き合いの悪友によるものならば即蹴りでも入れて逃走を図っただろうが。
何の邪気も感じさせない微笑と共に言われたら、どうにもできない。

「そういえば、マルコの脚、綺麗ですよね」

「…男に向けて言う言葉じゃねぇよい、ペル」

怒りも気持ち悪さも感じず、言うなれば呆れの方がかなりの割合で勝って、溜息混じりにそう返せば、変な所で天然なペルが「そうですか?」だなんて首を傾げている。

(そうですか、じゃねぇだろ、そうですか、じゃ)

大抵剥き出しにしている脚は、まぁ自分で言うのも難だが確かに男にしちゃ綺麗な方かもしれない。
何で髭は生えるのに脛毛は生えないのかという疑問は随分と昔の思春期に考えるのを放棄している。
だが同じ男に言われると、これがまた微妙な所だ。
多分この話を恋人にすれば、気が合いそうだとか楽しげに笑うのだろう…いや、もしくは妬けるね、などと言いながら脚を触ろうとして来るかもしれない。
色々な意味で普通じゃない相手なのでそれは充分にありえた。

「お前こそ、肌が色白でそこらの女よか綺麗だよい」

「焼けにくいんですよ。それに、あまり肌も出しませんから」

「そういや大概長袖だな。何か理由でもあんのかよい」

「故郷の習慣なんです」

ペルはあまり自分の事を話さないが、訊かれればあっさりと答を口にする。
一見すると秘密主義者のようでもあるが単純に聞かれないから言わないだけなのだろう。
隣に座っているペルの襟を徐に指先で引っ張ると、生白い首筋が覗いた。
やはり色白だな、と思いながら何気なく視線を流す。

「…仲がいいのは結構だが、周りの目を考えて貰いたいな」

嫌がるでもないペルに甘えてじろじろ見ていると、ペルの真向かいの席で食事に勤しんでいたドレークが苦笑を交えながらそう言った。
次いで、彼の隣、つまりは自身の真向かいに座っていたロビンが、慣れた方が早いわよ、とその言葉通りもう慣れきった風で定食の魚を解している。

「いつもこうなのか」

「えぇ、概ねはそうね。だから言ったでしょう?ちょっと居た堪れなくなるわよって」

ロビンの楽しげな声に、ドレークが成程、とこれもまた苦笑で頷いた。
食事の席を初めて共にするドレークはともかくとして、ロビンが居た堪れなさそうにしている所など見た事もない。
昼時ともなると、大抵の学生は食堂に集まるもので、うっかり遅れてしまったりすれば席はすぐに埋まってしまう。
近頃はペルと昼食を共にする事が多いので二人連れ立って早めに食堂に脚を向けていた所、ロビンが友人の席も一緒にと頼んできたのはこの面子の理由だった。
ドレークはロビンと同様、考古学を専攻しているが、遺跡や歴史に重点を置くロビンと異なり研究対象はもっぱら化石で、サンプルの保存などに時間を奪われては食事を取るのも忘れてしまう時があるのだとか。
研究者とはいつの世もこういったものなのだろう、了承して相席した時は人好きしそうな微笑が女にモテそうだな、位にしか思わなかったがなかなかいい奴だというのがこの短時間で理解できた。

「そもそもこういう話になったきっかけはお前だろうがよい」

「あら、私はただ、貴方の脚が羨ましいと言っただけよ?」

そこから先の会話についての責任はないと、ロビンは優雅に微笑む。
美人がにっこり笑うと、どうしてか逆らい難い何かを感じさせられるのだから困ったものだ。
ペルは我関せずとばかりに食事に手をつけている、裏切り者め。
少しはお前も気にしろ、とは思っても言わなかった。
言った所で多分ペルには何を気にしろと言われているのか解るまい。
覗き込んだ所よりも更に下、首元のあたりにキスマークなどこさえておいて慌ても隠しもしない鈍感な男に、軽く目眩がした。



随分とまぁ、情熱的な彼女をお持ちらしい。












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左側の人を早く出したいと言いながら出てこない今日この頃orz
まだマルコはペルの恋人=彼女認識
なかなか進まないのう…
あ、恐竜さんを出したのは趣味です(この野郎)





あきゅろす。
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