君の為のハロウィン講座








「あ、ちょっと手ぇ出して」

「は?」





廊下を歩いていたら、真向かいから奴が歩いてきた。



目が合っただけのその瞬間、奴はそう言って笑った。



























パラパラ、バラバラッ

居合番長こと桐雨は、反射的に手を出し、卑怯番長こと秋山の手から零れ落ちるものを慌てて受け止めた。
秋山はその反応を予想していたのか、じゃ、と言い残して立ち去ろうとする。
だがその背中を大人しく見送る程彼らは親しくも仲良くもなかった。


「何なのだ、突然」


手の中に落とされた、まるで宝石のようにキラキラと輝く色とりどりの包装紙が丸みを帯びている。
飴だろうか、しかし桐雨には、何にしてもあまり縁の無いものだった。
至極面倒そうに、気だるげな仕草で振り返った秋山は、んーと間延びした声をあげて桐雨を見る。


「お裾分け、かな。余っちゃったんだけど、調度いい所に君が来たから」

「私は体のいい屑篭ではない」

「何でそう卑屈に受け取るかなァ…ホラ、白雪宮さん甘いもの苦手じゃない?飴ならいけるかなと思ったんだけど、それも駄目みたいだからさ。いつまでも僕が持ってたら、責任感じちゃいそうじゃない」


人一倍正義感に長けた少女が甘いものを好まないと知っているが、飴も駄目だとは思わなかったのだと。
もらってくれれば彼女も安堵するだろう、そう言われてしまえば、桐雨とて突っぱねる事もできやしない。
そんな桐雨の性格を見抜いていたのか、とりあえずと礼を述べる桐雨を見て、秋山はにやりと笑ってみせる


「そういえば、君って今日が何の日か知ってる?」

「?……知らないが」

「そう。ま、日本じゃあまり馴染みがないし、君って日本の事にしか興味無さそうだものね」

「何かあるのか?」

「あァ、今日はね、ハロウィンっていうんだよ」

「ハロウィン?」

「そっ。子供が仮装して、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞって言う訳。大人達はお菓子を用意して、子供達にあげるんだよ」

「菓子を……?成程。だからこれを…」


ならば、秋山の中では白雪宮は子供と同格という事だろうか?と思いつつ自身も彼女をどこか危うく見ているだけに、素直に口に出すのは忍びない。
色とりどりの包装紙は和紙とは違った美しさがあり、例えそれが元は自身へ宛てての物ではないにしろどこか嬉しさを感じる。


「ハッピーハロウィン、ってね」

「……感謝する」


じゃ、とヒラヒラ手を振り今度こそ歩いていってしまう男の背に小さく礼を述べる。

それが気まぐれかどうかはともかくとして。
例えば自身の思う通りに体のいい屑篭であろうとも、その屑篭に自分を選んだのはあの男だ。












家に帰ってから包装紙を解くと、キラリと飴玉が光に反射して、宝石のようだと思った。





































未だに、念仏と居合は喋り方が解らない……
たまーに居合に優しい卑怯と、そんな卑怯にたまーにほっとする居合
うちの居合はひな祭りとか子供の日とかは解るけど、海外の行事はクリスマスすら解ってなさそうです(笑)



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