君との休日を
閉めきれていなかったカーテンの隙間から差し込む光は、まだ僅かなものだ。
太陽は、今からやっと活動を始めようとしているらしい。
アラームが鳴るいつもの時間まであと一時間位だろうか。
まぁそのアラームというのもチビ達を起こす時間と言うだけであり本当なら今起きて朝食と昼のお弁当を作っている筈なのだが…
なのだ、が。
「……おい、平気か?」
「平気か?」なんてよく言えたものだ。
平気なように見えるのか。
さっきから見てたら解るんじゃないかな普通。
まともに歩けないどころか、立つ事すらできない。
腰が痛いのはともかくとして頭が痛いのはどういう訳か。酸欠?まさかまさか。それは無いだろう。だって僕は今ちゃんと呼吸しているじゃないか。なら貧血か?貧血って、どこから出血してるって言うんだ…いや確かに血は出たけれど正直まだ痛いけれど、そんな下ネタを言ってる場合でもなくて。
「……幸太達、今日遠足なんだけど」
「送ってくるから寝てろ」
「……お弁当も、作らないとならないんだけど」
「俺が作るから寝てろ」
「……学校、今日登校日なんだけど」
「休みの連絡は俺がするから寝てろ」
至れり尽くせりってこういう事なんだろうか。
いやいや、でも彼が元凶な訳だからありがたがらなくたって良いんだよ。
あぁそれにしたってどうしよう幼稚園に彼が行ったら絶対泣き喚く園児が出るだろうし先生だって驚くだろう(特に園長はとても常識に縛られた人だから失神してしまうかもしれない)今度自分で行く時が少し嫌だ。というか、凄く凄く嫌だ。ありえない。
それに、学校だって休んだら絶対ある事ない事吹聴されるんだ。いやそれは自分の日頃の行いがあまり褒められたものではないから仕方が無い事なのだけれどしかし欠席位は自分で電話するべきなんじゃないだろうか。正直したくないけれどこれも彼に任せたら電話口で担任が首を傾げそうだ(だって朝から何で僕の家に家族でもない男が居るのかってなるだろう。そして彼は生真面目だから父だとか兄だとか誤魔化したりしないんだ絶対)
「…あと買出し。トイレットペーパー切れかけてたんだ」
「買ってくる」
「…電気も。遊具室の蛍光灯点滅してたし」
「買ってくる」
「あぁそれと、お弁当の他に朝ごはんも作らないとならないんだけど」
「…もういっそ全部言え」
今日は世間で言う日曜日だ。
本当なら、学校なんてサボって、遠足でない子供達を近所の公園に連れ出したりもしてやりたかったし家の物で無くなりかけている日用品の買い足しにだって行きたかった。
そんな希望は、今見事なまでに打ち砕かれている訳だけれども。
大体、お互い同性は初めてだから注意深く慎重に行おうと決めたにも関わらず途中から突っ走った彼が悪いのだ。
…まぁ、自分自身も途中から何が何だか解らなくなってはいたのだがそれはなかった事にしたい。というかする。
「…………ダルイ」
「悪かった」
「腰痛いし」
「悪かった」
「喉痛いし」
「まぁ、あれだけ鳴けば」
「鳴けばとか言わないでくれるかなぁ?」
ゲシッ、と動く限りでおもいきり蹴る。
それだけの振動でも、充分に痛いのだけれど高校生の癖にその親父発言は聞くに耐えないものがある。
それ以前に、そこも悪かったと言うべき所ではないか?
「……もう全部頼むからね」
「そのつもりだ」
「……眠いから寝る」
「あぁ、そうしろ」
怒るのも疲れた。
何より、さっきから労わるように髪を撫でる掌が心地よくて眠気も湧くというものだ。
あぁしかし眠る前に念のため最後の確認をしておこう。
「朝ごはんと持たせるお弁当作って幸太達送って学校に連絡して買い出しついでに他の子達外で遊ばせてきてね」
「…もう解ったから、寝ろ」
寝ろ、だって。
昨日寝かせなかったのは誰だっていうの。
あぁもうまた下ネタだよ。
…何かもう、凄く…ねむ、い……
「…さて、やるか」
眠りに落ちきる寸前に聞こえた、どこか決意染みた声に、少しだけ笑ったのは秘密。
君との休日を
(…やっぱり自分で電話してから寝る)
(どうした)
(それだけはどうしても不安だから(恋人の金剛ですとか普通に言いそうだし!))
初夜(笑)の次の日です。
体格差的に卑怯は動けなくなりそうだなぁと思います(笑)
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