金*卑

■金剛*卑怯




夜の帷に包まれて
一緒に眠ろう






「…ん、っ……?」


身体を何かに圧迫されるような息苦しさから薄く目を開けると、視界には見慣れた壁と自分の腕が映った。
何も変な所は無いじゃないかと瞬いて、それから重い何かの正体を知る。
ガッチリと腰に回された太い腕に、肩へかかる呼吸の揺れから、抱き締められている事に思考が至った。
しかも、抱き締めるというより抱き込むとかしがみつくだとか表現する方が正しいような、先程感じた息苦しさを彷彿とさせる抱擁だ。


「っ…金剛、寝てる?」


起きて、と声をかける。
こんな風にきつく抱かれたら息苦しくて寝れやしない。
しかしながら肩にかかる呼吸は規則正しく穏やかで、それはもう安眠している事が窺えた。
あァ、なんて絶望的状況だ。


「金剛、ねぇ…金剛…」

「………………寝ろ」


回されていた腕をバシバシと叩くと、夜泣きした子供をあやす母親みたいな小さな息をつく。
夜泣きなんかする年じゃないのに失礼だ…じゃなくて。


「苦しいから、離して」

「……」

「……せめて緩めて」


無言の拒否に、譲歩を示すと締め付けが少しだけ緩んだ。
緩んだ隙間に息をついたのも束の間、金剛の腕が身体を反転させ、また抱き寄せる。


「ちょっと、金剛…?」

「……苦しくないだろ」

「……苦しくはないけど」


根に持っているのか意趣返しなのか、真っ正面から抱き寄せられた為、目を閉じた金剛の顔がとても近い事を今更認識させられる。
目を閉じれば済む話なのだろうが、それはこの状況を受け入れる事と同義だ。


「……っ〜〜」

「……どうした」


どうした、とは本気で言っているのかそれとも嫌味か。
判断をつけかねて、それからこんな夜中に思い悩むのは時間の無駄だと諦めた。
金剛の言動に逐一振り回されていては身がもたない。


「…おやすみ」

「あぁ」


こういう時ばかり返事をする金剛に、朝になったらとりあえず蹴ってやろうと思った。












受卑怯って羞恥心あると思います(突然)



あきゅろす。
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