卑*念*卑

■卑怯*念仏*卑怯




夜の帷に包まれて
一緒に眠ろう






「…まだ、寝ないの?」


トロンとした眦でそんな事を言う秋山に、来音寺は、眠いのはお主だろうと苦笑した。
いつもなら互いに逆の立場だが、今夜は秋山が珍しく下になった(何の、とは疑問にしてはいけない)ので来音寺も元気なものである。


「…寝な、よ。明日も…早いんだし…さ」

「うむ。そうだな」


眠たそうな秋山はとても無防備で、来音寺は笑いながら空返事をする。
むっとしたような顔をして、グイグイと腕を引く秋山はいつになく子供のようだ。


「解った。解ったから引っ張るな。服が伸びてしまう」

「伸びた方が…業出しやすいだろ」

「寝間着まで伸びんで良い」

「いーから。ホラ…こっち」


ポンポン、と。
自分の隣に空いたスペースを叩く。
幼い童のような扱いに苦笑しつつ、招かれたまま横になると秋山がゴソゴソと動いた。


「…一体何の真似だ?」


胸板に擦り寄るように身体を寄せてきたかと思えば、脇から腕を差し入れて抱き締めてくる。
いや、体格差を思えば、抱きつくと言うべきなのか。


「…君って暖かいんだもん」

「コラ、人で暖を取るな」

「んー…やだ…」


だもん、だなんて子供のような口調は、やはり眠いからなのか。
夏を過ぎたものの日中はまだまだ暖かい。が、夜になれば涼しさを越す事もある。
だからと言っては語弊があるが、猫のように擦り寄ってくる男を邪険に扱う事もできずそれこそ口先だけで叱りつけるしかなかった。


「…君、って……お人好し」

「……否定はせんがな」

「でも…そ、ゆ所…嫌いじゃ…な…」


言葉は最後まで紡がれずに、すー…と安らかな寝息が代わりに零れた。


「…嫌いじゃない、か」


秋山は、例え行為の最中であろうと決して好きだとは口にしない。
それが彼なりの牽制なのかは知らないが、来音寺は秋山の言動に振り回されている自覚がありながら傍に居続ける。


お主が我に本心を見せるにはあと幾時の年月を要するのだろうか。


秋山の寝顔を見下ろし、来音寺は気長に待つしかないなと苦笑混じりに溜息をついた。












攻卑怯って羞恥心無いと思います(突然)
卑怯*念仏*卑怯はこんな感じです大抵(何)



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