爆*夜

■爆熱*夜子




夜の帷に包まれて
一緒に眠ろう






「ん…」


間近で聞こえた鼻に抜けた吐息に、ふと見れば、艶やかな黒い髪が見えた。
そういえば、今日は恋人を家に泊めたのだと寝起きで上手く回らない頭が考える。
もう一度寝ようと思ったが、寝顔を眺める機会などあまり無いからか、ついマジマジとその顔を見下ろした。
伏せた瞼から長い睫毛が飛び出ていて、どうにも擽ったそうだが、女はこの方が良いらしい。
睫毛が作る陰影は確かに美しい気もするが、男である自分にはおそらく一生理解できない定義だろう。


「……ん、…」

「っ」


女の身体がコロンッと転がり自分の方へ擦り寄ってきた。
豊満な胸が邪魔をするのか、中途半端な近距離に何故だか動悸が落ち着かない。


「……」

「っ、…んー」


起こさないようにと少しずつ距離を取ると、不服そうに唸ってまた距離が埋まった。
何なんだ一体。
そう口に出す事は簡単だが、声が大きいと常日頃目の前の女の片割れに口煩く言われているのでどうにも気が進まなかった。

起こすのは、可哀想だ。


(…それにしても、)


いくら恋人同士とはいえ女が男に擦り寄るだなんて、少々無防備過ぎじゃないのか。
自分と女は恋人という関係を裏付けるにはまだまだ微妙な距離を保っている。
時折女から香る香水だとか、時折物言いたげにこちらを見上げる仕草だとか。とにかくそういったものに正直参りかけているのが本当の所だ。
それなのに、尻込みしているのも本当は自分の方なのだから温い話である。
一線を越えようにも、今までそういった経験が無いから、どう扱うべきか解らない。

もしかしたら勢い余って火傷をさせかねない。

それ程に、己の内に燻る激情は熱く、そして信じがたい程に臆病だ。
だからと言って女の片割れに相談するのは嫌だった。
意味不明な揶揄を受けるのは火を見るよりも明らかだったからである。


「……道化番長」

「ん…、…」

「っ……、……よ、夜…子」


今は、恋人が眠っている間に名前を呼ぶのが精一杯だった。












爆熱って凄い奥手そうですね



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