酒は飲んだら飲まれる末路

※キャラが壊れ気味です


酒は飲んでも飲まれるな。

聞き慣れた文句ではあるけれども。


実は、飲んだらもうおしまいだったりする。
















「こーんーごー」


語尾にハートマークでもつきかねないその猫なで声に、金剛は重い溜息をついた。
一升瓶を片手に、ニコニコと笑っている卑怯番長の顔は見るからに真っ赤である。
メシを食いに行くとは言ったものの、結局は剛力番長の豪邸の中庭で食事をする事になったのだが、飲むわ食うわの大騒ぎにいつの間にか酒が紛れ込んでいたらしく。
居合番長がその場で昏倒し、道化番長ズはその介抱を、念仏番長と粘着番長、そして監獄番長は笑いに笑って大騒ぎをしている。
そして剛力番長は、相変わらずその貪欲な食を満たそうと口を動かしており…とにもかくにも、混沌としていた。
静かな場所といえば輪から離れた木の下位で。
唯一酒を飲んでいない爆熱番長と共に其処へ避難し、デザートに出されたプリンを食べていたのだが、静寂も束の間、酔いが回っている事など一目で解る卑怯番長が声をかけてきたのである。


「……酔ってるな」

「ぇー?酔ってないよー?」

「…未成年だろうが」

「かったいなァ、こんごーってば」


ケラケラと笑い危なっかしい足取りで近づいてきたと思ったら、爆熱番長とは逆の真横に腰を下ろし全体重をかけるように寄りかかってきた。
人前ではあまりくっつきたがらない卑怯番長にしては珍しい事象だ。
瞠目していると、卑怯番長が手持ちぶさたなのか一升瓶をユラユラと揺らし、


「でも、そこが好きー」


と、謳うように呟いた。


「………………は?」


ちょっと待て。
今のは幻聴か?
思わず確認するように爆熱番長を見れば、奴も目を見開いていた。
卑怯番長はニコニコと笑っている。


「ね、抱っこして」

「………完全に酔ってるな」


素面ならば絶対に言わないだろう要求に、グラリと理性が揺れたがどうにか溜息をつくだけで堪える。
その反応が不服だったのか、卑怯番長は子供のように頬を膨らませた。


「抱っこー、抱っこしてよ」

「…解ったから振り回すな」


どれだけ飲んだのか瓶の中は半分以下になっている。
酒瓶など、自分ならばともかくとして、常人に当たれば凶器にもなるものだ。取り上げるとまた不満そうな顔をしたが、抱き上げればすぐにニコニコと笑ってみせる。
まるで本当に子供を相手にしているようだと、溜息をついていたらフニュッと頬に柔らかい何かが触れた。


「……おい?」

「んー?」


変わらずニコニコ笑いながら卑怯番長の顔が近づく。
フニュッと触れたのは卑怯番長の唇だったらしい。
咎めにもならない声をかけると、エヘヘ、と首を傾げてはにかむ。


「ちゅーしちゃったー」

「……勘弁してくれ」

「……大変だな」


爆熱番長が、染々と哀れみの言葉を零す。
あぁ周りに誰も居なかったらと金剛が果てしなく理性にしがみついたかどうかは知らないが。
自分が求めるままにしてしまった場合、素面に戻った時が恐ろしい。
だが、ちゅーしちゃった、とか言いながら照れたようにはにかむ卑怯番長を前にしてどこまで我慢できるかなど愚問でしかなかった。
許されるならば、今すぐ襲いかかりたい…などと金剛が不穏な思考に至ったのを見計らったかのように卑怯番長の行為は更にエスカレートしていく。
ギュッと金剛の太い首に腕を回し、抱き上げられた膝上で膝立ちになり上体を伸ばすと、先程の子供のような顔はどこへやら欲を孕んだ眼差しで見つめ。


「…ね、こんごーもして?」

「っ…!」

「こんごーもー……ちゅー…して…?」


僅かに首を傾げて、甘えるように擦り寄ってくる。
…そ、それは反則だろう!
待て待て落ち着け。今ここで襲ったら人として最低じゃないのか?!(※求められたのはキスだけデス)
そもそも周りには他の番長も居る訳で、隣には爆熱番長も居る訳で、人前でそんな事をしたなどと後々になって卑怯番長の耳に入ったら暫くは二人きりでも触らせて貰えなくなるかもしれない。
目先のご馳走か、それとも後々の平穏か…(※しつこいようですが求められたのはキスだけデス)

金剛が悶々と悩んでいる間に卑怯番長は取り上げられた酒瓶を手にし、グイグイと煽っている。


「………おい」

「なーに?ちゅー?」


これはやはり人として宥めるべきだろうと声をかけたが、卑怯番長はニコニコと笑ってまたキスを求める。
あぁ此処が二人きりの空間ならばと金剛が祈ったかどうかはともかく、とりあえず酒瓶を取り上げるのが先決だと首を振った。


「…違う。飲み過ぎだ、もう止めとけ」

「んー…こんごーが、ちゅーしてくれたら止めりゅよ?」


既に舌が回っていない。
流石に急性アルコール中毒になる前には止めなければ、と意志を固めていた金剛はその台詞に身体が固まった。
爆熱番長に助けを求めようかと思ったが、物凄い勢いでソッポを向かれてしまう。


「………」

「………」


…目力で訴えてみたが何の耐久勝負か明後日の方に固定された顔はチラリともこちらを見ず、金剛は早々に諦めた。


(…キスをすれば後で怒る…キスをしなきゃ飲み続ける…ど、どっちにしても悪い方にしかならねぇ)


そんな金剛の葛藤などいざ知らず、卑怯番長は眠たそうに欠伸を零した。
そして、


「…こんごーがしないなりゃいーもん。他の人とすりゅかりゃー」

「なっ、」


何を馬鹿な事をと金剛が言う前に、卑怯番長は身軽にも爆熱番長に飛び付いてしまう。
慌てたのは、全く違う方向を見ていた為に状況を把握していなかった爆熱番長だった。
突然飛び付いてきた卑怯番長が、それはもう妖艶に微笑むと爆熱番長の頬をガシィッと掴む。


「君だったりゃー、ちゅーしてくれりゅよねー?」


はい握手しよう、と同じようなノリの軽さで、ちゅー、と言いながら卑怯番長が顔を近づける…が、パニック状態の爆熱番長の唇までもう少し、という所で金剛がその首根っこを掴み上げ猫の子のように己の方へ引き寄せた。


「むー…こんごー…?」


その顔は爆熱番長でさえ固まる程の…阿修羅のようなものだったのだが、卑怯番長は気にしないのか不服そうに金剛を睨み付ける。
ヒック、と喉を鳴らし、目を据わらせているのでそろそろ限界であろう事が窺えた。
文句を言おうと口を開いた卑怯番長だが、金剛の行動が先手を取った。
ガバァッ!と抱き寄せ、叩きつけるように口づける。
爆熱番長が目を剥くが、金剛は気にせずそのまま舌を侵入させた。


「んんっ…ん……」

「……」

「ふ、ぁ……んっ」

「……」


…な、長い。
爆熱番長が、目を逸らすべきか否か悩んでいると漸く長いキスが終わったのか卑怯番長がクタリと力無く金剛に寄りかかっている。


「……爆熱番長」

「っ、な、何だ?」

「…他言無用だぞ」

「…………貴様も大変だな」


心底哀れみを籠めた言葉に、金剛は重く溜息をついた。
















酒は飲んだら飲まれる末路

(っ〜…まだ頭痛い)
(自業自得だ)
(……あのさァ、僕って何かした?)
((ギクッ)な、何でだ?)
(んー……さっき爆熱番長に会ったら、顔を真っ赤にして逃げられたんだけど)
(……知らねぇな)
















相互御礼に染様に捧げます!
『金剛×卑怯で金剛が困るぐらい素直に甘える卑怯』
相互御礼…で良いのだろうかこれは(汗)
キャラ崩壊しまくりですみません…!



あきゅろす。
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