思考回路はショート済み
「無理だから無茶だから無謀だから諦めてホント」
「…嫌なのか」
「嫌とか嫌じゃないとかそういう精神的なものじゃなくて物理的な話として無理だって言ってるの」
ベッドの上で男が二人見つめ合う…じゃなく、睨み合う事数秒。
マヌケなやり取りだとしても当人にしたら重要な攻防戦。
つい先日、突然口を舐められコンテナに連れ込まれディープキスされ…って、振り返ってみると凄い急展開だなぁ…じゃなくて。
とにかくその後色々あった末やっと告白をされ、僕は受け入れた訳で。
本当に、それはつい先日。
なのに目の前の大男は世間一般的な恋人同士が行うべき事をすっ飛ばしてベッドインしようとしている。
別に交換日記から始めようだとか手を繋いで遊園地デートだとかを要求したい訳ではないのだが。
ただでさえ男同士が行うのは大変らしい行為を、何の知識も経験も無い男同士(しかも片方は2m強の大男)がするのは無茶だ。
どう考えた所で無理だろう。
せめて心の準備をさせて貰いたい…いつまで経ってもできないだろうけど。
「キスだけじゃ嫌なの?それとも身体だけ目当てとか?」
こういう言い方をすれば人のいい彼は強行手段には出ないだろう…解っててやる僕も僕だけど。
「そうじゃないが…」
「じゃあ良いじゃない」
「…少し触ると、もっと触りたくなる」
相変わらず真顔で恥ずかしい事を言う。
気持ちは…とりあえず嬉しいと言っておこう。しかし感情論だけでは乗り越えられない事もあるのは当然の事だ。
「何がどう無理なのか俺には解らねぇ」
知った事かと一喝で済まされないだけマシなんだろうけれど、説明するなんて冗談じゃない。
まさかやり方を知らないなんて事は無いと思うが、それにしたって前向き過ぎやしないか。
「……君ってさ、たまに思い切りブン殴りたくなるよね。本気で言ってる分」
何かもうアホらしいと言うかバカらしいと言うか。
「君って平均身長軽々と越えてるし僕と体格差ありすぎ。無理だね無理、絶対無理だ。絶対入らない」
投げ遣り気味に言い募ると、困惑した表情で首を僅かに傾げて見せる。
…断じて可愛いとか思ったりしてないんだからな。
大男はやはり真顔のまま、とんでもない事を言い出した。
「触りてぇだけだから、それ以上は良い」
はい?
つまり…つまり、挿れなくて良いと。そういう事?
っていうか触りたいとか恥ずかしい事をまたサラッと…!
「……駄目か?」
「っ〜〜〜〜〜!」
だから小首を傾げないの!
あぁもう卑怯は僕の専売特許であって君には到底似合わない事なのに。
「…す、少しだけだからね」
そんな君にほだされる僕も、きっとどうかしてる。
思考回路はショート済み
(でもごめんタンマあと5分待って)
(……5分で良いのか?)
徐々に金剛ペースに(笑)
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