聞きたいのは君の告白










気になると言われてごまかした。


自覚も何もしていない癖に、美味そうに見えたからと口を舐められた。


報復にしては随分なものではないだろうか。



そこから何がどうなってそうなったのかは知らないが。






何故か僕は押し倒されてキスされている。



























月美を送った後、ついて来いと言うから行ってみれば、其処は以前僕が使ったコンテナ倉庫で。
何故か、何故かこんな事に。


「…ん、っ」


肉厚な唇から予想もつかない程に熱い舌がヌルリと現れて腔内を這い廻ろうとする。
不覚にも震え、無意識に逃げを打った身体を逞しい腕が抱き寄せる。後頭部に回されていた方の手が更に繋がりを深めようと力を込めた。

信じられない。
ありえない。

戦った時も思ったが、金剛晄という男は異常だ。
異常で、無茶苦茶で、唐突。
いきなり引き倒すから、腕に提げていたスーパーの袋はその辺に放られて中の物が少し飛び出ている。
卵が無事なら良いけど。


「……んん、ふっ…」


声が漏れる。
止めろ、聞きたくない。

相手を押し退けようとしてもウエイトが違いすぎる。
むしろ押し退けようとしている筈の手が必死にすがっているように見えなくもない。


「っ、んん…っは…」


しかも、意外や意外。
予想外にキスが巧いだなんて情報には無かった。卑怯だ。
卑怯な行為は、僕がする事であって彼はむしろ卑怯からは無縁に等しいと言うのに。


「ん、んんっ…!」


それから何度か舌を絡め取られて、酸欠間近という所になってやっと唇が離れた。
相手が全く息を乱していないというのがまたムカつく。


「…美味そうに見えたが」


おい、待て。僕は食べ物じゃないぞ。
馬鹿力で押さえ込まれた所為で身体の節々が痛む。
その痛みに顔を歪めつつ厚い胸板を思い切り蹴りつけた。


「…いきなり蹴るな」


じゃあいきなり盛るな。
って違う違うこの状況で言い合いをしても意味は無い。


「気が済んだなら早くどいてくれないかな」

「…済んでいない場合はどうしたら良い?」


この野郎。
真顔でそんな事を訊くな。
ディープキスで気が済まないってどこまで行き着くつもりなんだ。
そもそも彼が行き着く所まで一緒に付き合う義務も義理も僕には無い。


「はぁ…あのねぇ、美味しくなかったって結論が出たのに気が済まないのかい?」


信じられない。
ありえない。

いい加減にしろと言いたくとも多分本人ですら解っていない事だろうから怒っても仕方ないのだろう。


「美味くなかったとは言ってねぇ」

「じゃあ何なの」

「プリンみてぇに甘かった」

「っば…馬鹿でしょ、君」


苛立つ僕に、真顔で恥ずかしい事を言う彼。
薄暗いコンテナ倉庫の中で、男二人が地べたに倒れ込んで…いやこの場合ってもしかして襲われていると思うべきなのか?
しかも多分いや確実に自覚も無いまま彼はこんな事をしているのだろう。
冗談じゃない。
せめて、告白の一つでもしてくれたら…いやいやいやいや違うから!


「…もう一回、良いか」


良いかって。
良い訳無い。
だって君は何も言ってない。


信じられない。
ありえない。


信じられない事に
僕は嫌だった訳ではなく

ありえない事に
鈍感な彼に苛々しただけで


「……………その前に、何か言う事があるんじゃないの」








聞きたいのは君の告白

(大体いきなりディープキスってホントありえない)
(む……すまねぇ)










金剛は色恋に鈍感だと良い




あきゅろす。
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