深層心理は正直者










好きになる最低限の条件は、異性であること。

それから







一目惚れなんて言葉がある位なんだから、外見が重要。

それから、当たり前だけど、抱き締めるなら、女性特有の柔らかい身体がいい。
男なら、普通は皆そう思うに決まってる。

なのに、






















なのに、現在進行形で何故か同性と抱き合っている自分。
抱き合っていると言うより、体格差を考えると抱き付いていると言うべきか。
ううん、しかしそれにしてはきつーく抱き締められているような気もするが。


「っ…金剛、苦しい」

「あぁ、悪いな」


腕力の違いを見せ付けられた所で、元々が規格外な男なのだからと敗北感は既に湧きもしない。
厚い胸板から離れると、漸く頭が混乱し出した。


(えぇっと…金剛が、)


金剛が、真面目な…と言ってもいつもと同じ顔でいきなり告白してきて。
いやその前に好みのタイプを聞いたのは僕だけれどそれはただ世間話の延長というか…


『好きな子のタイプは?』

『タイプ…?』

『癒し系とか、可愛い子とか茶髪とか。無いの?好み』


てっきり陽奈子ちゃんの名前が挙がると思っていたのだがそれは間違いだったらしく。


『そうだな…黒髪は好きだ』

『あぁ、大和撫子系?』

『いや…少し手がかかる位が良いかもしれねぇ』

『そういえば君、意外と面倒見良いよね』

『それから…誰かの為に一生懸命な奴は嫌いじゃないぜ』

『…随分と具体的だけどさ、もしかして金剛って好きな子居る?』


金剛の恋話なんて滅多に聞けるもんじゃないから、つい追及し過ぎてしまった。
聞かなければ、多分その先を金剛が言う事は無かったのだろうから。


『お前が好きだと言ったら、どうする?』


金剛のその問いに、自分はなんと返しただろうか。実は、あまり覚えていない。
気付いたら金剛に抱き締められている状態だったから、脳内回線がショートしたのだろう自分はうっかり彼を受け入れてしまったようだ。


(……や、覚えてるけど)


そう都合良く記憶が消えたらこんなに思い悩まずに済んだだろうに。
金剛の告白を、最初は冗談だとばかりに受け取った僕は、笑って流そうとしたのだ。
……物凄い目で睨まれたからすぐに止めたけれど。


『……それは本気で言ってるって受け取るべきかな?』

『俺は冗談は言わねぇ』


まぁ、そんな事は知っているが、なんて意外と冷静そうな自分に内心驚いたものだ。
金剛は僕を好きだと言っただけで、付き合いたいとか具体的な要求は口にしない。
多分、彼自身が見込みのない事を念頭に置いているのだろうけど、その不器用な気遣いがツボに入った。
ツボと言うか、憐憫を誘ったと言うか。雨の中に捨てられている子犬と目が合ってしまった心境に似ていると言うか…とにかく、無下にはできないと思ったのだ。


『んー…とりあえず、保留で良いかな』

『………………保留』

『だって、僕は君の事をそういう風に見た事も無いのに、良いも悪いも言えないし』

『…………』

『少なくとも、嫌いではないからね』


……あぁそうだ。そう言った瞬間に金剛からきつーく抱き締められたんだった。
衝動で抱き締めるなんて、意外と落ち着かない面もあるじゃないか。
…それを可愛いだなんて思う僕は既に充分金剛に毒されている気がする。


「………金剛って、男が好きなの?」

「いや」


ふと疑問に思った事を訊いてみると、すぐに否定された。
まぁ肯定されても困るけど。
でも、そうなると、どうして僕を好きなのか気になるのは仕方ない話だ。


「…じゃあさ、何で僕を好きとか言うのかな」

「男じゃなくお前が好きだ」

「っ…だから理由が聞きたいって言ってるんだけど」


恥ずかしい事を真顔で言う。
僕も僕で、追及しなきゃ良いのに何で追及するかな。
でも、こんな風に好かれるのって凄く久しぶりだからか、何だか嬉しい気がして。
浮かれているのだろう、か。


同じ男から告白されて?

柔らかくもない厚い胸板に、太い腕に抱き締められて?




「意外と意地っ張りな所に、弟妹達の為に頑張ってる所、それから笑った顔と、悪巧みしてる時の顔。人を食ったような態度も見ていて可愛いと思う。それと、」

「ごめんもう良いからむしろ黙ってお願いだから黙って」


誰だこいつは。
こんなベラベラと誉めちぎる男だとは思わなかった。
というか可愛いって男に言う事じゃないだろ!
折角、今ときめきそうだったのに…ってときめいてない!何だときめくって!!


「…はぁ。とりあえず、君が僕を好きっていうのはよーく解った」

「そうか。なら良い」

「……とりあえず、答を出せるまで一緒に登下校でもしてみる?」




好きになる最低限の条件は、異性であること。

それから







一目惚れなんて言葉がある位なんだから、外見が重要。

それから、当たり前だけど、抱き締めるなら、女性特有の柔らかい身体がいい。
男なら、普通は皆そう思うに決まってる。

なのに、






なのに、何でかな。



君に好きだと言われた時、

嫌だとか気持ち悪いとか、


全然、思わなかったんだよ。










深層心理は正直者

((でも教えてやらない))
((…とりあえず、可能性はある訳か))










こんな馴れ初めも良いかなと…お、思っ、て…(泣)



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