不埒な味見















無茶苦茶な男


銃で足を撃ち抜き

爆発で視力を衰えさせ

トラックで右腕をイカれさせ

全身ボロボロの筈だったのに

筋肉で鉄球を跳ね返すとか




ホントありえない

















「あ」

「おう」

「こんにちはー」


スーパーの買い物帰り、歩いていたら規格外も甚だしい大男が、幼女と親しげな様子でプリンを食べている所に遭遇した。


「ハイ、あーん」

「あ――――…」


…色々な意味で凄い光景だ。いや別に彼が幼女趣味だとか僕には関係無いけど(でもそんな情報は無かった筈)
ただ何となく気になるだけ。


「……おい、何か言いたい事でもあるのか」

「べーつに?」


何となくその場に留まってはみたものの、やる事も無ければ話す事も無い訳だから適当に携帯を弄っていただけなんだけど。


「何か用でもあるのか?」

「無かったら居ちゃ悪い?」


にっこりと笑いながら疑問で返してやる。邪魔ならそう言えば済む話だ。
しかし次の返答は、予想だにしないものだった。


「いや、訊きたい事があったから調度良かった」


訊きたい事だって?
思わず大男を仰ぐと、ギロリと睨み付けられる…多分ただ見下ろしてるだけなんだろうけど。
彼の性格上、害を加えなきゃ何の問題もないと知ってるから別に怖くもなかった。


「何だい?」

「俺は、スジが通らねぇ事が嫌いだ」

「…まぁ、そうだろうねぇ」

「なのにだ。お前の事が気になる理由が解らん」

「……………………は?」

「教えてくれないか」


教えてくれないか、と言われましても。
気になる?誰が誰を?
いやこの場合は彼が僕を?


「…僕の正々堂々卑怯な戦い方が気に食わないの間違いじゃなくて?」

「いや、あれはスジが通っていなかったと思うがお前にも事情があっただろう」

「…ふーん」

「何だ」


何だ、じゃない。
目の前の大男にとってしたら自分は一番気に入られないタイプだと自負していたが。
ある意味、だからと言うべきなのだろうか。
人は、自分に無いものを持つ人間に惹かれる事が多いらしいから。
しかし、困った事になった。
自分には『スジは通すもの』という信念を持つ大男など荷が重い。
筋と同じく好意的な感情すらいかにも真っ直ぐで重そうである。


「…僕に聞かれてもねぇ」


返す言葉はこれが正解。
自覚症状が薄いなら尚の事。
自覚しない方が良い。
自覚しないで貰いたい。


「…それもそうだな。悪い」

「いーぇ」


少し納得いかなさそうだけれど、とりあえずプリンを食べる事にしたらしい。
ふと見れば、月美が口周りをベトベトにしていた。


「あーホラ、こっち向いて」


小さな弟妹達が居るからか、ついつい出した手はほぼ無意識だ。
それでも自分より小さな少女がニコニコと笑っている姿は微笑ましい。


「ありがとーございます」


月美は知らないが、以前は人質にすらした相手から警戒の欠片も無い笑顔を向けられ。


(…可愛い)


と思うのはきっと幼女趣味でなくとも普通の感想だろう。
頬についたプリンを指で拭うが、生憎とティッシュなんて持ち歩いていないのでペロッと舐めた。
道端のティッシュ配り員も、流石に毎回箱ごとあげる訳にはいかないらしい。アテにしていたので箱ティッシュを買い忘れた。


「月美が作ったのー」

「へぇ、結構美味しいって、は?ぇ…ちょ、ちょっと?」


ニコニコと笑う月美に感想を言おうとした時、不意に近づく大きな影。
何をと問う前に唇をベロリ、舐められる。


「…………な、に」


うわ、声が上擦った。
顔を離した影は、何の間違いもなく金剛晄その人で。
そいつは、これでもかと言う位の真顔でこう言った。


「美味そうに見えたんでな」








不埒な味見

(…君は国家にどんな教育を受けてきたんだい?(ユラァ))
(?何を怒っている)
(普通、真顔でああいう事を言うか?!)










卑怯は口元が卑猥過ぎr(殴)




あきゅろす。
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