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 金剛番長こと、金剛晄と。卑怯番長こと、秋山優は。
 一カ月程前、見事に想いを成就させ、仲間から恋人という関係になった。
 秋山にとって、金剛晄という男はとにかく異常の上化物。怪物。けれど自分には無いものを全て持ち得る、男ならば誰しもが憧れるような、そんな存在だった。
 本来、憧れという感情は遠い存在に抱くもの。近くに在れば嫌な部分が目につき、理想という幻影は大破され現実に絶望するものだ。だが金剛という男はどれ程その中身を知っても、嫌悪すべき点が見つからなかったのである。
 欠点ならば、人の話を知ったことかの一言で済ませるなど、あるにはあるが、それは幻滅に至る程のものではなく、むしろ時にはあまりの丸投げ具合に感嘆してしまう程でもあり、秋山は金剛を知れば知るほど惹きつけられていった。
 鍛え上げられた体躯。その度量の広さ。押し付けがましくない包容力。万人に与えられる情け深さ。
その憧れはもしかしたら父に抱くそれにも似ていたかもしれないが、けれど結果として、それは秋山の中で恋愛感情に変化していく事となる。
 だが以前自身が行った所業も含めるに、その想いが実る可能性など無いに等しいものだと秋山は理解していたし、夢を見る程彼はロマンチストでもなかった。
 それでも日々募っていくばかりの想いを放置するには荷が重く、これ以上収束がつかない状態になる前に気持ちに区切りをつけようと、秋山は離別の覚悟をして金剛に想いを伝えたのである。だから、土壇場でつい逃げ場を残そうと、拒否されれば冗談だと言えるように軽々しい口調になってしまったのはほぼ無意識だった。
 それを金剛がどう受け取ったのか、秋山には解らないが、確かに金剛は諾と言ったのだ。
 自分も好きだと、言ったのだ。
 古臭い言い方になるかもしれないが、秋山は天にも昇る気持ちでいた。よもや現実がこうも上手くいくとはと柄にもなく有頂天になったし年相応に喜びもした。


 それが、一カ月前の出来事。








あきゅろす。
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