Soprannomeあだ名
夕刻
一階のダイニングキッチンで、奈々さま特製のオムライスをいただいている。総勢7人の食卓はとてもにぎやかだ。(ほとんどランボが騒いでいるだけだけれど)
「あの」
ふんわりとした卵を口に入れると、綱吉様が話しかけてきた。
「なんですか? 綱吉様」
「その、"様"ってやめない?」
「…わかりました、十代目」
「あ、十代目っていうのもなんか…」
綱吉様は眉を垂れさせ、しゅんとしてしまった。
「ならば、なんとお呼びすれば?」
「できれば普通に、ツナで…」
「それはできません。自分は貴方をお守りさせていただく立場ですので、そのように気安くお呼びすることは許されません」
そう言うと、今度は少し哀しそうな顔をされた。
違う、こんな顔をしてほしいんじゃないんだ…
あの時の、"あの人"のような…
「理由を、教えていただけますか?」
「えっと、なんか俺に合ってないっていうか、むずがゆいっていうか…」
だんだん、綱吉様の顔が赤くなっていくような気がした。
「セレネさんとは仲良くなりたいから!」
声を張り上げて言う綱吉様はとても真剣そうで、顔も真っ赤で…
これ以上は何も言えそうになかった。
「では、"ツナさん"とお呼びしてもよろしいですか?」
これが、今自分にできる最大限の譲歩。するとツナさんは納得してくれたのか、首をめいっぱい縦に振った。
「ならば自分はセレネとお呼びください。アルトのことも呼び捨てでかまいません」
「うん、わかった」
そして嬉しそうな顔をして、ツナさんはオムライスをほおばった。
よかった、笑顔になってくれて…
今の自分は、あの時のように無力じゃないんだ…
しばらくして、それまで黙って傍観していたリボーンさんが口を開いた。
「ツナ…――――」
ブフォッ!
リボーンさんとの席が離れていて最後のほうが聞き取れなかったのだが、ツナさんはしっかり聞こえていたらしい。途端に口の中からオムライスを…
吐き出した。
「まあツー君! いきなりどうしたのよ」
奈々さまはタオルを取りに席を立ち、
「ガハハ! ツナが吐いたー!!」
ランボはツナさんをからかい、
「ななな、なに言い出すんだよリボーン!!」
当のツナさんはリボーンさんに抗議した。
さっきまでの名残なのか、まだ顔が赤い。
「あわてすぎだぞ。図星か?」
「んなっ!」
ツナさんは頭に血が上ったのか、顔がさらに赤くなった。
「どうかされたんですか?」
「な、何でもないよ!!」
そう言いながらツナさんは顔を横に振った。
それはもう必死に…
「…ツナも大変ね」
そんなビアンキの独り言を聞きながら、セレネは頭に疑問符を浮かべることしかできず、
最後の一口のオムライスを口へ運んだ。
***
こんど奈々さまに作り方を教えてもらってアルトにも食べさせてあげよう
20071120
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