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Mustするべき事
その日の夜は、別に特別な日ではなかった。
ツナさんの命を狙う者達。例えばボンゴレを潰そうなんて考える馬鹿な弱小グループや、あるいはツナさんを次期ボンゴレボスとして認めていない、いわゆる内輪の者。
そんな者達が、例えツナさんのあずかり知らない所であっても、絶えることはないわけで。

その者達を排除するのが、自分とアルトの役目なのだ。
それを不満に思うことはないし、辛くもない。むしろこの護衛の任に就く前の方が、色々と手汚いことばかりだった。
だからセレネは最初、本当にツナの言っていることがわからなかった。


「…セレネ?!」

「あ、起きてらっしゃったんですか」


夜12時をまわった頃、仕事を終えたセレネが沢田家へ戻ると、玄関でツナが待ち構えていた。
ツナは慌てふためきながらセレネに近寄る。


「うんそれは…ってそんなことどうでもいいんだ! セレネこそどうしたのその…!」

「あぁ…少し汚してしまいました」


対してセレネはいつもどおり冷静に、服の汚れをツナに移すまいと、ツナの動揺を右手で軽く制した。
セレネの白いシャツには、赤い染みが点々と散っていた。


「よ、汚したって…」

「私の血ではないです」

「っ…なんで!? 何があったの?!」

「外に少し知らぬ者がいたので、その対処を…」


直接的に言うこともないだろうと、セレネは当たり障りのないように言葉を濁した。
しかしツナはそれだけでおおよそを察したように、顔色を青くさせた。
この妙にさとい所は、確かにボンゴレ九代目の面影を思わせられる、とセレネは感じている。


「…俺を、狙ってる?」

「‥‥」


セレネは答えられなかった。答えることで、ツナを追いつめたくなかった。
事実を肯定することができなかったのは、いつぶりだろうか。

ツナは眉を寄せて黙り込んだ。

傷つけたくなくて黙ったことが、逆にツナを困らせてしまったことにセレネは気付いた。
ツナの辛そうな顔が、セレネの心を痛める。

また、だ…

また自分は大切な人を傷つけてしまった。
自分はただ、この優しい人に笑っていて欲しいだけなのに…










***
いつも、大事なことがうまくできない

20110225


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