Gemelli双子
「セレネ姉さん」
「なに? アルト」
日本のエアポートに、めずらしい男女の二人組が大きなトランクと共に降り立った。
深い海のような蒼い髪、金色にも見える瞳は、それぞれ片方ずつ眼帯で覆われていてる。なにより鏡で映したように瓜二つの外見は、見目の良さとともに周囲の視線を集めていた。
「ここが、日本…?」
「そうですよ」
「…うそや」
「どうしました?」
女の方はいたって冷静。しかし男の方は目を見開き、わなわなと震えていた。
「こんなとこが日本なわけない! サムライは? マイコは? 誰も頭にチョンマゲはえてないやん!」
「…誰から教わったんですかそんなこと」
「コンシリエーレの」
「家光さんですね…」
女は呆れの視線を男に向け、言った。
「アルト、それは何年も昔のことです。今の日本は西洋化が進んでいて、生活様式もイタリアと大差ないんですよ」
男は相当なショックを受けたようで、俯きながらブツブツ独り言を言っている。
「まさか、そんな…後でバジルにメールしてやらんと…」
そんな男の姿を見て、女は溜息をもらした。
「(まったく、まだあんなことを信じていたんですか。まだまだ自分がいないと駄目みたいですね…)」
「ちゃおっス」
二人が聞き慣れた故郷の挨拶に辺りを見回すと、足元にスーツ姿の赤ん坊がいた。
途端に二人は背筋を伸ばし、その赤ん坊に深々と頭を下げた。
「リボーンさんですね。初めまして、自分はセレネ」
「弟のアルト」
自分達の何倍も小さな子供に敬意を示す彼等。周りから見れば、それは奇妙な光景だろう
「よく来たな。九代目から話は聞いてるぞ」
しかし、彼らにとってはこれが正しい力関係なのだ。
大人も子供も関係ない
「女王蜂(レジーナ)の忘れ形見…いや、」
力ある者だけが生き残れる世界の住人
「双子の蜜蜂(ツイン・アーぺ)」
マフィアなのだから
***
→To:バジル
→From:アルト
バジル! オレらは騙されとった!!
日本に「チョンマゲ」はない…!
20071115
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