Derivare由来 「ねぇ」 それは昼休み、弁当も食べ終わって、ただの暇つぶしのような質問だった。 「二人は"蜜蜂"ってあだ名なんでしょ? それってどういう意味?」 母親特製の弁当箱を布で包みしまいながら、ツナが聞いた。 「そうなのか? 変わったあだ名だな!」 「あだ名やなくて"通り名"なんやけど…」 山本のボケやアルトの突っ込みも気にせず、セレネは淡々と続けた。 「それは自分達が"女王蜂"の子供…いえ、弟子だからです」 「まんまじゃねえか」 「ハヤトの人間爆撃機もまんまやんか」 「んだと…」 言い合いをはじめる、山本いわく漫才コンビの二人。 しかし例え暇つぶしであっても、ツナがいま聞きたいのはそういうことではなかった。 「その"女王蜂"っていうのは?」 「それは…」 セレネは一瞬ツナから目を逸らし、ちらりとアルトを盗み見た。そのセレネにしてはめずらしい不審な動作に、ツナは違和感を感じる。 しかしそれを言葉に移す前に、セレネの口が開いた。 「針を主な武器にしていた暗殺者です」 「ほんで女性やったから、って理由やな」 無数の針を自在にあやつり、 針に仕込んだ猛毒で相手を刺し殺す ただその姿は実に美しく優雅であり、 "女王"と呼ぶにふさわしかったという… 「実は針だけやなくて、糸も扱う両刀使いやってんけどな」 「あぁ! だから二人は…!!」 そのツナの言葉にセレネは深く頷いた。 「そうです。自分が針で」 「オレが糸、で半分ずつ技を教えてもらってん」 以前、まだセレネ達が日本へ来たばかりのころ、ツナは二人に彼らの武器について教えてもらった事があった。 武器の形、大きさ、使用法。長所や短所にいたるまで…ツナにはとうてい理解のできないような話だった。 当然、ツナも途中でわからないからと伝えたのだが、 『これは自分達の忠誠の証でもあるのです。今は聞き流していただいて構いません』 武器の欠点を教える事は、己の欠点を教えるのと同じ事。 己の欠点を教えるという事は、彼らの世界では直接"命"に関わってくるのだ。 彼らの誓い 命をかけるとはそういう意味でもあった。 「へぇ〜、すげえ母ちゃんだな」 「母ちゃんて、そんな気軽なモンちゃうねんけど…」 話の内容を二割程度しか理解していない山本(しかも天然)にとっては、そこまでが限界だったのだろう。 もはやアルトからは諦めの溜息しか出なかった。 *** あの違和感は俺の勘違いだったのかな 20110225 |